医療法人健周会東新潟病院 医局長
齋藤 紘丈
日頃より当院の日当直業務をお引き受けいただいております先生方にこの場を借りてお礼申し上げます。
当院は同一の敷地内に介護医療院「栞の郷」、介護老人保健施設「陽光園」(96床)を併設し各施設は渡り廊下で繋がっています。当法人は主として長期的なケアを必要とする高齢患者さんの看取りを含む療養、並びに関連施設の入所者の急変時の治療を中心に取り組んでおります。病床内訳は一般病床(障害者病床)55床、医療療養病棟110床、介護医療院106床の合計271床です。
最近の当法人のニュースとしましては、2020年4月に須田院長が赴任され、同時に介護医療院「栞の郷」が開設されました。また、同年7月には泌尿器科外来、10月には外科・肛門外科外来が開設されたことで、入院患者さんの尿路・下部消化管トラブルによりきめ細やかに対応できる体制となりました。2021年4月には片柳理事長が新たに着任されました。
2022年8月には電子カルテが導入され、オーダリングが効率化し病院、介護医療院、介護老人保健施設間での情報共有が飛躍的にスムーズになりました。個人的には電子カルテ導入で一番改善されたのは注射・内服処方だと思っています。紙カルテの時代、注射オーダーは月が替わると書き直さなければならないという不便な運用でした。もちろん電子カルテでDo処方する際も内容は毎回よく確認するようにしています。
私は2021年2月に健周会に入職し、東新潟病院と介護医療院の両方を担当させていただいております。介護医療院では対応しきれない状態の悪化(呼吸不全、麻薬を要する悪性腫瘍など)は東新潟病院に転院後もそのまま担当することができ、また逆に状態が安定し医療行為が少なくなった病院の患者さんに介護医療院に転院していただいた場合も同じくそのまま担当させていただいております。
高齢の患者さんは様々な合併症を発症することが多く、毎日が新しい病態との遭遇のように感じます。先日は重症心不全、尿毒症の超高齢患者さんがいましたので、ご家族に説明の上モルヒネ静注を行ったところ呼吸困難が改善し、ご家族からは「眠るように穏やかに旅立った」と言っていただきました。
また別の日にはこのような症例を経験しました。90歳代女性、間質性肺炎で入院歴があり、その際はプレドニン筋注で著明に改善。施設に戻ることができたが、再度呼吸困難、低酸素血症のため入院。CTでは両肺にスリガラス影が出現し、間質性肺炎の再燃と考えてプレドニン筋注するも酸素化の改善は乏しかった。休日の入院であったためCTの読影レポートが2日後に届き心不全と診断された。利尿薬投与し1週間で改善、その後退院。
私はもともと放射線科におりましたが、指導医から「腹部CTでも必ず心臓(心筋の造影不良=心筋梗塞の可能性、心嚢液の有無、ある場合は血性かどうか、心拡大など)をよく見なさい」と言われていたのに慌てていると胸部CTで肺野条件しか見ていなかったことに気づき、深く反省させられた次第です。今回の症例で、CT、MRIは必ず読影に出すこと、レポートはすぐに確認し一字一句精読することの重要性を再確認しました。
さて、皆様ご承知の通り、日本社会が直面している少子高齢化は医療分野でも重要な問題です。出生数は1949年270万人、2003年112万人、2023年73万人と大きく減少し、労働者人口の減少に伴い人材確保が難しくなっています。一方、今年は1947年からのベビーブーム時期に生まれた団塊の世代が全員75歳以上になり、およそ5人に1人が後期高齢者になります。その結果、医療・介護の費用は増大するのに担い手は減少するという医療経済学的に深刻な状況に陥ると予想され「2025年問題」と言われています。
その対処法の一つとしてDX(digital transformation)があげられます。これはデジタル技術によって社会や生活の形を変えることを指します。国の「医療DX令和ビジョン2030」では、①全国医療情報プラットフォームの構築 ②電子カルテ情報の標準化 ③診療報酬改定DXを3本の柱とし、医療介護の質の向上を目指していきます。当院では医療DXに必要とされるクラウド型電子カルテを導入しておりこうした変化に十分対応可能です。
最後になりますがどうぞ今後とも医療法人健周会をよろしくお願いいたします。
(令和7年7月号)
東新潟病院正面像
陽光園