新潟市民病院 院長
大谷 哲也
新潟市民病院は「市民に信頼される患者中心の全人的医療」をビジョンとして、昭和48年10月に診療科目18科、300床で中央区紫竹山に開設され、翌年には520床となりました。医療需要の変化に対応するためさらに増床し、昭和62年には736床となりました。平成19年には医療の高度化・専門化に対応するため、中央区鐘木に完全電子化された新病院が建設され、平成25年には精神科新設のため南棟が新築されました。現在は診療科目38科、676床の高度急性期総合病院となりました。総職員数は1639人で、チーム医療により225人の医師を支えています。
新潟市民病院の理念である「患者とともにある全人的医療」は、ウィリアム・オスラー博士の「医学は患者と共に始まり、患者と共にあり、患者と共に終わる」の言葉に基づいて作られました。この格言は、患者を診察するだけでなく、患者の心理的、社会的、経済的な状況も考えた全人的な医療を実践することの重要性を説いています。当院の第3代笹川力院長は、ウィリアム・オスラー博士に傾倒しておられた第2代荻間勇院長の意思を引き継ぎオスラーの胸像制作を行い、昭和60年4月に除幕式がおこなわれました(写真1)。今も病院の正面玄関ではオスラーの胸像(写真2)が職員の研鑽と努力を見守っています。また開院20周年記念事業では新発田市医師会長、富樫益郎先生のご寄贈によりギリシャのコス島のヒポクラテスの苗木が植樹され、新病院でも玄関先に移植されました。これらは50年経過した現在でも当院の理念である「患者とともにある全人的医療」が守られていることを示すものです。
新潟市民病院は50周年を迎え、記念式典が令和5年12月3日に開催されました。基本方針は時代の変化もあり50周年を機会に、働き方改革、医療安全、生命倫理、健全経営を加えて7項目に改訂しました。
上記の7項目の基本方針が、組織としての礎となることを願っています。
これからも、全職員が患者参加型の「ぬくもりのある医療」を実践することで、安心・安全な医療の提供につなげ、地域の基幹施設としての責務を果たしたいと思います。
(令和7年8月号)
写真1 オスラー胸像除幕式(昭和60年4月27日) 左から、日野原重明先生、笹川力院長
写真2 ウィリアム・オスラー胸像(現病院正面玄関前)