医療法人恒仁会副理事長・新潟南病院長 渡部 裕
新潟南病院は1978年に現理事長を中心とした5名の医師により、医療・福祉・保健活動を通して地域社会に貢献することを理念として、新潟市中央区女池に開院しました。近年の高齢社会に対応し、病院に足りない機能を補うために、いくつかの併設施設を新設してきました。2018年には同じく中央区の鳥屋野へ新築移転しました。
地域の総合病院的な役割を果たすべく、コモンディジーズを中心に幅広い分野の診療を行っています。実際に、耳鼻科と精神科を除くほぼ全ての診療科を標榜しています。内科では様々な専門を持つ医師が勤務しており、外科系では外科、整形外科、婦人科、泌尿器科、眼科と皮膚科にて全身麻酔を含む手術を施行しています。さらに、小児科と歯科では特色ある診療を行っています。小児科では通常の外来に加えて、発達外来と発達を支援する言語聴覚療法を行っています。歯科では摂食嚥下障害と補綴が各々専門の2名の医師が勤務しています。高齢社会を反映し、多くの嚥下障害や義歯が必要な患者が受診しています。
これまで当院で最も頻度が高い入院疾患は誤嚥性肺炎でした。しかし、近年の心不全患者数の増加(心不全パンデミック)を受けまして、心不全患者が誤嚥性肺炎患者よりも多くなりました。1年間に250名弱、実に3日間に2名ほどの頻度で心不全患者が入院しています。
この多数の心不全患者へ最大限の治療効果を得るために、心不全患者に介入するあらゆる専門職が緊密に連携する心不全治療プログラム「みなみメソッド」を独自に構築し運用しています。介入する職種は、医師、看護師、リハビリ療法士、歯科医師、管理栄養士、薬剤師と医療相談員です。心不全患者が入院すると、初日に各職種が専門的視点から目標を設定します。あらゆる併存疾患と、歩行障害、嚥下障害と認知機能障害といった併存障害の改善のために介入を行います。電子カルテを通じて進捗状況や患者情報を共有しながら活発な議論を行います。患者の病態に応じて急性期病棟、地域包括ケア病棟(60日まで)と回復期リハビリテーション病棟(180日まで)の3つを活用し集中的なリハビリを行います。この手法の効果は高く、実際に当院の直近8年間の心不全入院1,519例(平均85歳、認知症36%、嚥下障害37%、低栄養46%)において、入院時に病前の61%まで低下したADLが、退院時には病前と同等の水準まで回復しました。地域包括ケア病棟では、リハビリに加えて、自宅環境の整備や介護サービスの導入、退院先の調整といった退院支援も行っています。今後はみなみメソッドを心不全以外の疾患にも応用します。
50余名の療法士が勤めるリハビリ部は、失われた機能の回復のために高密度のリハビリを行っています。土日祝日年末年始を含む毎日、1日最大3時間のリハビリを提供します。入院早期からリハビリを開始し、急性心不全で酸素投与中であっても病状が許せば入院翌日から介入します。
多数の併存症を含めた治療、リハビリや退院支援により入院患者の在宅復帰を積極的に目指していますが、来院が困難な患者へは訪問診療を行っています。内科を中心として外科、皮膚科と歯科が訪問診療を行っています。看護師、リハビリや管理栄養士といったスタッフも訪問医療を提供しています。
このように当院では、急性期から、回復期、慢性期、在宅医療・介護にまで一貫した医療を提供し、地域住民の健康に関するあらゆるニーズに応えています。外来・入院を問わず当院での診療が必要な患者さんや、歩行障害・嚥下障害へのリハビリが必要な患者さんがいらっしゃいましたら、ご遠慮なくご紹介ください。原疾患に加えまして併存疾患の治療や歩行・嚥下障害へのリハビリ、介護サービスの調整といった包括的な医療を提供して、より良い生活を送るための支援を行います。
(令和7年10月号)

眺望の良いリハビリ室

病院外観