松浜病院 診療部長
野澤 宏二
松浜病院は昭和33年に東新潟および阿賀北地域の精神医療を担うべく創設されました。その後、社会情勢、人口動態、患者層の変化に対応し、現在は350床を有する精神科の単科病院として診療を続けております。認知症病棟が50床、療養病棟60床が4棟、精神科一般病棟が60床といった構成です。全てが閉鎖病棟ですが、入院中の患者様の状態に合わせ病棟単位で解放処遇の方法を検討しています。入院中の患者様の疾患は55%が統合失調症、30%が認知症、気分障害が10%ですが、長期入院中の統合失調症の患者様が少しずつ減り、新しく入院してくださる方の多くは認知症というのが実態で、昨今の情勢を鑑みるとその傾向は他院と大きな差はないと思われます。病棟では作業療法が盛んです。日々の手工芸やレクリエーションに加え嚥下機能訓練や歩行練習、SSTなどにも取り組んでいます。外来でも作業療法を行い治療的な効果が得られていますが、当院ではリワークも行っています。気分障害、適応障害などの患者様を中心に院外の方も参加いただける体制を整備しており平均すると12名ほどの利用者様が通所しております。遅ればせながら令和6年には訪問看護ステーションも開所し、新潟市北区、東区、中央区、新発田市などを中心に訪問看護を展開しつつあります。看護師が定期的にご自宅に訪問することで自閉的になりやすい方々の対人交流性の維持や回復に寄与したり、病勢の増悪を早期発見したりすることが可能となりました。
総じて、チーム医療により精神科リハビリテーションに力を入れて運営している病院といえるかもしれません。今後もそうありたいと思っています。
さて、最初に申しましたとおり、松浜病院は開院後67年が経過いたしました。結果、歴史を感じさせる場所がそこかしこにあります。若干色褪せた床材の廊下、突然現れるレトロなフォルムのドアノブ、木製の公衆電話ボックス…。病を得た人の治療に長年にわたって携わり、慈しみ、そしてある意味ともに暮らしてきた時間がそこからは感じ取れるために、私の目にはしみじみと好ましいものに見えます。しかし実際に利用する患者様にはご不便をおかけする場面も多くあるのかも知れず、そこを想うと悩ましいところです。我々治療者の思考態度も同様の事になっていないかを時々ふと反省することもあります。医療的な技術面のことは当然の事ながら、その根本にある倫理観、接遇、地域との関わりなどなどについても新しい考え方と当院の伝統をバランス良くミックスし、少しずつブラッシュアップ出来ればと考えています。今後もこの地域で必要とされ続ける病院であるために我々は何をすべきなのかを真剣に考えながら謙虚に励んでいく所存です。今後とも御指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。


(令和7年12月号)