医療法人社団晴和会 黒埼病院 院長
佐藤 宏
当院は2002年に開設、2023年9月1日より医療病棟60床、介護医療院120床で運用している。どちらも急性期病院からバトンを引き継ぎ、医療また介護を継続していく役割を担っている施設である。共に特養、老健などの介護施設よりも医療に重きを置く施設である。言葉で説明すれば明瞭だが、実際の立ち位置は不明瞭なところが有り、どんな患者に適合しているのか難しいところである。以下問題点を挙げてみたいと思う。
1.医療行為はどこまで要求されるのか、どこまで可能なのか。
医療病棟、介護医療院、共に、病院として家族は認識しがちである。可能な医療処置の限界を認識してもらう必要がある。一般病院から転院時に納得しているかの確認が必要である。医療者側は知識や経験にもとづく思考の枠組みの中で物事を理解し判断しているのに対し、白紙状態の患者側とすれば理解は困難である。驚くほど真意は伝わらないものである。
2.医療病棟においては、医療依存度の高い症例では、業務内容も複雑になり、スタッフのストレスが増え、人手も必要となる。限られた予算の中で、設備面でも充実が必要となる。
3.介護医療院では、介護度と医療依存度が同時に高い例も多い。介護依存度に比例して、食事介助、排せつ管理、入浴など、複雑となり、想像以上に人手を要する。周辺症状への対応も特別な配慮が必要な場合が多い。
重症例では「見取り」への移行も納得してもらう必要がある。紹介時点ですでに終末期の患者も増加傾向である。患者家族の希望は点滴継続が多い。現場での終末期の見取りの経験から、口を湿らせる程度の水分投与にとどめ、点滴はしないことが良いと思う。点滴をすることで、むくみが増え、痰が増え、呼吸が苦しくなる等、結果として患者を苦しめる原因となりえる。家族のためだけの点滴は不要だろう。
4.今後の展望
当院開設時点と現在では患者層は大きく異なる。制度の改定ごとに体制の変更が必要だった。そのたびに部屋の改修、書類の変更、契約の変更などを余儀なくされた。患者層も大きく変化し、患者との疎通性の低下で感情の伝達も難しくなっている。医療介護従事者のモチベーション低下につながらないだろうか。
電子カルテの導入後、患者より画面を見る時間が多く、患者との接触時間の減少を実感している。自分自身もAIの一部となっているような感じである。
増え続ける社会保障費。高齢化人口の増加、これに比例する医療費増加。だれがこれらの費用を担うのか。円安、輸入物資の高騰、これに随伴した諸物価値上がり。人手不足。低い賃金水準(特に介護職)等々。多くの問題がある。
AIロボットの導入など、将来は可能かもしれないが現状では不可能だろう。
将来に負の財産を残さないため、我慢や制限も必要になるのか、現状を小手先の操作で解消するのではなく、長期的な展望で解決していく必要を感じる。

写真 趣味の木工製作、今は小物作品のみですが、今年の干支の馬の、ひも通しパズルです。
(令和8年2月号)