社会医療法人健進会 新津医療センター病院 院長
豊島 宗厚
新緑の季節を迎え、新津の秋葉丘陵の木々は緑を濃くし、広大な新潟平野には早苗が一面に揺れています。ここ秋葉区(旧新津市)には一年中で最も清々しい季節が訪れています。
新津医療センター病院は、この美しい田園の地に1983年(昭和58年)6月創立されました。今年で43年が経過し、さすがに建物は古さを隠せませんが、中では病院スタッフがチームワークを発揮し、活気に満ちています。
この地域における当院は、主として地域の高齢者の医療を引き受けるとともに、介護・福祉関係施設・サービスと連携して、退院後の療養生活を支援していく役割を担っています。受け持つ診療上の病期は急性期後から回復期を担当し、病床構成としては、一般急性期40床、地域包括ケア106床、合計146床を運営しています。こうした当院の病床構成は、診療制度や地域の人口構成の移り変わり、介護施設の状況の変化などの影響を受け、これまで幾多の変貌を遂げてきています。
振り返れば、2000年(平成12年)に介護保険法が成立して以来、地域における高齢者医療と介護との関係は年を追うごとに密接になって来ました。2014年(平成26年)国が定める「医療介護総合確保推進法」に基づき定められた「地域医療構想」は、全国各地の病院の機能や病床のあり方に大きな影響を与えました。結果として、2025年を目途とした病院病床機能の再編が全国的に展開されましたが、新潟県においては、地域医療構想調整会議などを通じ、主として公立・公的医療機関において先行的に実施されたと理解しています。その結果、民間の私的医療機関ではどちらかというと自主的な取り組みと捉えられて来ました。当院でも、これまで地域医療構想の考えを実現しようと病床機能を変更した事情はなく、むしろ地域医療構想を受けて改定された診療報酬に沿い、病床病棟の組み替えを行なうという受動的な動きでした。当初運営されていた一般急性期、急性期後、回復期、療養期の病床構成は、上述の様に、急性期後、回復期(地域包括ケア)の2つの機能に集約されました。またこれに呼応して、当法人の介護老人保健施設(老健)が、2025年後半に一部を介護医療院へ転換し、高齢者の状態に応じ流れを円滑に行える方向へ展開しました。しかし、当然のことながら当方単独で医療と介護を完結することは困難であり、地域に広く活動する介護施設・サービスと密な連携を作っていくことが必要です。実際療養目的の病床だけを考えても、当法人の老人保健施設、介護医療院合わせて100床のほか、法人外の協力施設600床、さらには広く地域の多施設と密な連携協力体制を築くことが必要不可欠となっています。
今世紀当初からこうした考えを持ち、病院に地域連携相談センターを設置し、他施設との密な連携を保ちながら、日々支援協力を行なってきました。そうした連携活動を省みて思うことは、医療と介護に従事する人々が、互いに同じ高さの「ラウンドテーブルに着くこと」の重要性です。
介護保険制度が立ち上がってまだ間もない2002年(平成14年)12月、当時の新津市において「新津市の在宅医療を考える会」が初めて開催されました。その会を嚆矢に、2004年(平成16年)2月新津地域の有志が集まり、「地域連携運営委員会」が立ち上がりました。以来、この地の医療と介護に携わる多施設、多職種の代表が毎月定期的に集うことになりました。これまで優に200回を超える会議が開催され、医療と介護を取り巻く多種多様なテーマのもと、活発な意見交換を行って来ました。この会では、一方的に意見を押し付けるのではなく、職種を代表して参加された一人一人が自由に意見を述べ合う環境が用意されました。従って、地域連携に関する規則や決め事が生まれる様なことは少ないものの、互いの意見を認めあい、リスペクトして、「相手を解し自らを処する」考え方が醸成されてきたと思います。まさに「ラウンドテーブルディスカッション」の実践です。
この会を始めるのとほぼ同時に、意見交換を地域全体に拡大したいとの思いが強く現れてきました。それが新たな集会の企画である「地域連携協議会」です。第1回の協議会は2004年(平成16年)4月に開催されましたが、新津地域で働く医療介護関係者及び行政担当者の方々に声をかけ、多数の方に集まっていただくことが出来ました。途中新型コロナによる休会を挟みながらも、2025年10月までの間に計20回開催することができました。この会では、講演会やグループワークなどを通じて知識や理解を深めるとともに、互いの状況を知ることで、相互に協力支援の輪が広がるきっかけとなりました。こうしたプロセスの途上、情報共有手段としての「地域連携手帳」が生まれ、嚥下障害・栄養障害を有する高齢者等のための「あきは食のサポートチーム」が立ち上がりました。
この様な活動により、お互いに「顔の見える関係づくり」が行われ、一旦顔が見えると頼みやすい、断れないという、連携を行う上で最も大切と思われる人間関係が形成されてきました。こうした連携組織のあり方はネットワーク型と呼べるものであり、実際当地の病診連携や救急、歯科、薬剤、栄養、リハビリ等の多職種連携は、病院や医師主導というよりも、ネットワークで動く連携との印象を強くします。
このほど、2025年を目途に進められて来た「地域医療構想」が一定の成果を上げて終息し、新たに2040年を目指して「新たな地域医療構想」が立ち上げられました。それによれば、地域包括ケアシステムの基盤に「時々入院、ほぼ在宅」の考え方が据えられ、2026年度診療報酬改定でも、病院にはそうした考えに沿う役割を担うことが求められています。かつて2008年(平成20年)地域包括ケア研究会が提案した「地域包括ケアシステム」には、「市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていく」と記述されています。この新津地域では、多職種の人々が顔の見える関係を作り、互いにフラットな立場で、地域の特性に応じた医療・介護活動を展開させていきたいと思います。私たち新津医療センター病院も、そうした地域の活動に少しでも貢献できることを心から願っています。

(令和8年6月号)