新潟市医師会 会長 藤田 一隆
私が2期目の会長職を務める新執行部が発足してから9か月が経過しました。会計年度の途中での理事改選に伴う担当部長の交替もありましたが、平成28年度の事業はほぼ予定通り、滞りなく終了いたしました。なお、本年3月末日をもちまして新潟大学枠の鷲山和雄理事が退任され、後任として新潟大学医学部副学部長の西條康夫先生をお迎えいたしました。鷲山先生には心より感謝申し上げますと共に、今後のご健勝を祈念いたします。
さて、新年度を迎えるにあたり、新たな事業計画を策定いたしました。昨年2期目の会長就任時に掲げた3つのテーマ(「強い医師会づくり」、「個の充実」、「新潟市医師会からの発信」)に沿って、ご紹介いたします。
1.強い医師会づくり
組織率の向上を目指して、D会員(研修医)の入会を促してきましたが、全員入会には程遠い結果となりました。会費を無料化しても入会しない先生が多数いました。結局、研修開始となる4月を逃すと入会は望めないことが判明しましたので、本年3月に研修指定病院を当会執行部役員が訪問し、新研修医の入会を強くお願いしました。さらに、総務部と学術部が協力して、医学部学生の地域医療研修や実習を企画し、学生時代に医師会に興味をもっていただく方策を検討することにしました。また、広報部と病院・勤務医部が連携して、新潟大学医学部教官や病院勤務医で医師会未入会の先生方を把握し、より具体的に医師会の広報活動を展開していくことにしました。
入会後のメリットを増やすという観点から、長岡市医師会に倣って、研修医の研究発表の場を設けることを検討しております。また、今年度から学会助成金の基準を明文化し、広く募集いたしました。地域医療研究助成金の対象も基礎医学分野にも拡大していく予定です。さらに、昨年から開催している新規開業会員ガイダンスについては、総務部と社会保険部の連携の下、内容を充実させ、定期的に開催していく予定です。
2.個の充実
個人の力を発揮するためには、その“場”が必要です。各担当理事の仕事量を均等化し業務内容を明確にするため、部の改編を行いました。「医政・調査部」を「医療安全部」に、「福祉部」を「福利厚生部」に名称変更し、それぞれの業務内容も変更しました。また、「地域医療部」を「地域福祉部」と「在宅医療部」に分割し、激増した業務を2人の理事で分担することにしました。すでに、新任理事も含め、すべての役員がそれぞれの業務を全うし、新しい企画も数多く立案されております。新しい“場”で、存分に力を発揮されることを期待いたします。
3.新潟市医師会からの発信
会員の先生方には、広報部が中心となって、会報やホームページ等で情報を発信してまいります。加えて、大学病院や一般病院医局にも学会誌を送付し、未入会の先生方にも情報提供をさせていただきます。
県医師会に対しては、郡市医師会長会議や代議員会等の席で、当会から種々の提案をさせていただく予定です。県医師会を通じて、日本医師会にも発信されることを期待いたします。
新潟市に対しては、今までどおり“顔の見える関係”を維持しつつ、事あるごとに協議を続けてまいります。地域医療研究助成事業の成果を市の政策として参考にしていただくことも願っております。
県医師会に倣い、実際に医療分野を担当している報道関係者との懇親会を開催し、当会からの正確な情報提供に努めてまいります。
政治に関しては医師連盟の役割となりますが、国政選挙にも積極的に関与するとともに、新潟市議会議員との交流も深め、当会の考え方を丁寧に説明してゆく所存です。
すでに、内視鏡を用いた胃がん検診に関しては、ガイドライン作成にあたって“新潟方式”が採用されるなど、全国的にも注目されており、多くの関係者が視察に訪れております。今まで培った経験を生かして、新潟県内で新たに同検診を開始される市町村に対しても、要望に即した具体的情報提供を行ってまいります。
さて、介護保険法第5条第3項で、介護保険法における「地域包括ケア」に係る理念規定(平成23年6月改正、24年4月施行)が創設されてから、「地域医療再生基金」(平成25年度~27年度)、「地域医療介護総合確保基金(通称:新基金)」(平成26年度~)、「介護保険法地域支援事業」(平成27年度~)など、次々と国の施策が示されました。「地域医療再生基金」によるモデル事業に対しては、予め予算額(総額1.2億円を県内5か所で分割)が提示されており、その枠内で事業計画を策定・実行いたしました。ところが、「新基金」においては、国の総額が示されたのみで、新潟県への配分額さえも決定されないまま、「在宅医療推進センター整備事業」と「在宅医療情報化推進調査・検討事業」を展開することを余儀なくされました。具体的な指標もない中での事業計画策定は困難を極めました。一昨年11月に「在宅医療推進センター」を開設し、専任の職員3名を採用しましたが、実際に支給された「新基金」の額は人件費を賄うにも足りない内容でした。同時期に、新潟市と委託契約を結び「在宅医療・介護連携センター」を在宅医療推進室内に設け、地域支援事業交付金を得ることで、何とか資金面の問題を解決することができました。
まさに、国の施策に振り回された5年間でした。さらに、平成30年4月には、診療報酬・介護報酬の同時改定があり、「地域医療構想」が組み込まれる医療計画、国保財政運営の都道府県単位化も始まります。今までの事業を継続していくだけでは、医師会活動が成り立たなくなっております。世界レベルで情勢が刻々と変化し、何が起きても不思議のない現状においては、“しなやかに”、そして、“したたかに”、医師会を運営していくことが肝要と考えます。
今後とも、会員の先生方のご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
(平成29年4月号)