副会長 浦野 正美
近年、医療分野における情報通信技術、いわゆるICT(Information and Communication Technology)の活用が進められております。今回は新潟市医師会におけるICTの現況と今後の展望について述べたいと思います。
在宅医療に関しては平成27年11月から当会内に在宅医療推進センターと在宅医療・介護連携センターが開設され4名の専任職員が活動しています。また平成29年4月からはICTツールであるSWANネット(Net4U)も本格的な稼働を開始して、現在約350施設で活用されています。
SWANネットは在宅における医療・介護連携のために、多職種が協力してSNS(social networking service)を利用することによって様々な情報交換を行うクラウド型電子カルテですが、今後は救急医療への応用も考えております。
在宅での生活を支える上での重要課題の一つが24時間365日対応可能な救急医療体制の構築でありますが、単独の医療機関では対応能力に限りがあり、今後は夜間や休日などの急変時の受け皿として、新潟市急患診療センターを活用することも考慮されます。
そこで急患診療センターに電子カルテを導入して、SWANネットとも連動させることにより、高齢者を中心とした在宅医療患者が急変した場合に、迅速に対応可能となる、地域医療情報連携ネットワーク構築を目指しております。
具体的には急患診療センターと消防救急隊員、2次輪番病院での携帯端末による共有化を行うことにより、在宅療養患者の急変時にSWANネット登録医療機関、病歴・薬歴などの必要情報を瞬時に共有することで、効率的な救急搬送を行うことができます。もちろん、これには閲覧可能な職種の規定、参照内容の制限などのルール作りが必要です。
重症の場合は2次輪番等の専門病院に転送される場合も想定されますが、医療情報のICTによる連携により、初期応急対応の内容が転送先病院で参照可能となり、翌日には、かかりつけ医も治療経過を把握することができ、更なる救急体制の充実に寄与することが可能になると思われます。
また将来的には、関連医療機関の同意と協力が不可欠ではありますが、広域救急医療情報管理のサーバー構築が望まれます。これは各輪番病院の当番日の当直医の専門診療科、病床空状況などの情報を各病院が夕方までに入力して、急患診療センターが情報管理、受け入れ調整を行い、当直医、救急隊がその情報を活用して、限られた医療資源の中で効率的な救急医療を行うという構想です。
このシステムが本格的に稼働すると円滑な救急搬送に貢献すると共に、救急医療現場のビックデータ蓄積が可能になります。このデータを医療関係者と行政とで解析することにより、将来の救急医療体制の改善に貢献することができると思われます。
まだまだ様々な課題が多く、SWANネットの参加施設と利用者拡大、関係機関との調整や、予算獲得などの問題もあります。一歩ずつ着実にICT化を進めていきたいと考えておりますので、会員の諸先生方のご指導ご鞭撻をお願いしたいと存じます。
(平成29年9月号)