新潟市医師会 副会長 浦野 正美
2025年問題に代表されるような超高齢社会を迎えるにあたり、地域における医療・介護・福祉関係者による多職種連携により、包括的かつ継続的な地域完結・循環型医療の提供を行うことが必要とされています。この流れを受け、医学部の卒前教育にも、医師として求められる基本的な資質・能力に加えて地域医療やチーム医療、コミュニケーション能力を身に着けることが求められており、2016年に医学教育の指針となる医学教育モデル・コア・カリキュラム(コアカリ)が改定されました。
コアカリでは、①学外の臨床研修病院などの地域病院や診療所、さらに保健所や社会福祉施設等の協力を得る、②早期体験実習を拡充し、低学年から継続的に地域医療の現場に接する機会を設ける、③診療参加型臨床実習については、指導医、多職種の教育体制、患者の理解などに、大学病院と同様の水準が必要であるので、密接な教育連携の下、積極的に地域医療実習の協力病院への配属を検討することが望ましい、などが提言されています。
新潟県においてはすでに新潟大学医学部1年生の早期医学体験実習(EME)や地域枠関連医学生を中心とした2~5年生の佐渡地区や魚沼地区などでの地域医療実習が行われています。新潟市医師会では2003年からEMEに協力しており現在は20名の学生を、また今年度からは主に地域枠関連医学生などを対象とした3年生5名の地域医療実習も受け入れています。今後はより地域に密着した医学実習が可能になるように新潟市医師会としても協力していきたいと思います。
新潟市においては在宅医療・介護連携センターが中心になって各区において20の在宅医療ネットワークが活動しており、地域の医院、歯科医院、地域病院、訪問看護ステーション、薬局、居宅介護支援事業者、介護事業者、区役所などの有志が集まり、地域に密着した医療・介護・行政の連携を行っています。
実地医家が多職種と協力して行っている在宅医療の現場に学生さんが触れることにより、新潟市における地域医療に対しての関心と理解を深めていただけると思います。またこのような実習を通じて、卒業後の研修先を新潟市に選んでいただける学生さんが増えることを期待します。指導する側の医師も、学生を教育することにより、医学的知識の再確認を行い、若い人との対話を通じて自分が医師になった時の原点を思い出す機会になるかと思われます。
このような教育体制を整えることにより、将来的には単に高齢者に対する医療や介護だけではなく、全年齢を対象にした、予防も含めた地域保健や地域福祉に対する理解と実践が期待されます。
(平成30年9月号)