新潟西蒲メディカルセンター病院 院長 田宮 洋一
当院は、旧巻町国民健康保険病院の跡地に平成20年8月に開院し、今年で10周年を迎えました。病床は165床で4病棟(一般1、医療療養3)からなり、旧巻町から介護老人保健施設「槇の里」、訪問看護ステーションも引き継いでいます。救急告示はなく、回復期リハビリ病棟、地域包括病床もありません。平成29年度の入院は532件で、入院元は、当院外来と地元の診療所と介護系施設が329件(61.8%)で、このうち285件(86.7%)が緊急入院でした。急性期病院からの紹介(post acute)は203件でした。退院先は自宅が60件、死亡退院は218件(41.0%)でした。地域における当院の役割は、急性期後(post acute)、軽度急性期(subacute)、回復期・慢性期と、看取り、外来ではディケアと介護予防、訪問看護・リハビリであり、地域で一定の役割を果たしてきました。団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降は多死社会を迎え、西蒲区でも、75歳以上の人口が2020年に比べて2025年では1,623人、16.2%増加します。高齢者人口の増加は患者数の増加につながり、当院が貢献できる範囲の増加につながりますが、将来のことを考えると不安なこともあります。
1.人手不足;看護師は、7対1の看護配置の導入時には東大から新潟までリクルートにくるほどの争奪戦でしたが、養成学校が増えたこともあり充足した病院も増え、採用試験を行っている施設もあると聞きます(当院は未だ不足気味です)。一方、介護職の希望者が減少し、全国の養成学校の定員の44%しか入学しないと新聞に載っていました。当院職員の約2割は非医療・介護職で、ディケアの送迎運転手、給食の配膳車を操作する人、環境整備、中材業務などに従事していた方も高齢化で引退し不足する可能性が大です。労働人口が減るなかこれを補うことができるでしょうか。今年の介護福祉士の学校の入学者の6分の1は外国人であり、一般職も含めた外国人の採用を考える時代を迎えているのかも知れません。県内には早くから外国人看護師を採用されている施設があり見習う必要があるかも知れません。IT化の促進とロボットの導入も検討が必要でしょう。
2.終末期医療の変化:当院には寝たきりで意思の疎通もできず経管栄養を行っている方が多くいます。自分の意思で経管栄養を選択した方は稀で、ほとんどは家族が選択した方です。高齢者で様々な合併疾患を有している方が多く、心肺停止時に人工呼吸や心臓マッサージを希望する方はほとんどいません。最近は経管栄養も希望しない方が増えつつあるように感じます。また、昨今は老健や特養、高齢者向け住宅など介護系の施設での看取りを希望される方も増えているようです。国も在宅医療の促進に力を入れておりこの傾向はますます強まります。死亡退院が44%を占める当院では介護病棟の存在意義を再考する必要があります。
このほか新築が予定される県央基幹病院や県立吉田病院と当院の役割分担、消費税率の増加など心配の種は尽きません。地域包括ケアシステムを推進する国の方針に従い、地元の医療・介護施設とネットワークを作り、“ときどき入院、ほぼ在宅”という役割を積極的に果たすのが不安に対する最大の対策と考えています。
(平成30年12月号)