新潟市医師会 会長 藤田 一隆
新しい元号も「令和」と決まり、まさに新しい時代が始まろうとしています。私が3期目の会長職を務める新執行部が発足してから10か月が経過し、平成30年度の事業も予定通り滞りなく終了することができました。会員の皆様のご協力に対し、心より感謝申し上げます。
1.原点回帰
会長職3期目のスローガンとして、「原点回帰」を掲げました。その規範として、『日本医師会綱領』、『新潟市医師会定款』、『医の倫理綱領』を挙げました。『日本医師会綱領』には4つの約束が示されています。その中の「国民」を「市民」に、「日本医師会」を「新潟市医師会」と読み替えれば、「新潟市医師会は、新潟市民の健康で文化的な明るい生活を支え、新潟市民とともに安全・安心な医療提供体制を築き、医学・医療の発展と質の向上に寄与し、新潟市民の連帯と支え合いに基づく皆保険制度を守ることを、市民に約束する」と解釈することもできます。その礎となる倫理観は『医の倫理綱領』が示すとおりであります。判断に迷った時の道標にしようと思います。
2.定款について
『新潟市医師会定款』は、法人としての“憲法”に当たるものであり、すべての会員が遵守すべき原点であります。現在使用されている定款は、平成25年4月1日、当会が「一般社団法人新潟市医師会」として再出発した際に策定されました。それまでは「社団法人新潟市医師会」が策定した定款を用いていました。平成18年の公益法人制度改革により、従来の民法により設立された社団法人に代わって、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づいて新たな社団法人を設立することとなりました。これに伴い、新たな定款策定が必要となった訳であります。平成23年4月発行の定款と平成25年11月発行の定款を比較してみると、その違いがよくわかると思います。当時、私も副会長として新定款策定に関わりました。当初の草案には、「社員」、「社員総会」という表現が用いられていましたが、当会には馴染まないということで、慣れ親しんだ「代議員」、「代議員会」という表現を用いることにしました。一方で、毎年開催されていた「総会」は議決権を失うことになりましたが、会員相互の交流を諮ることを目的に継続することにしました。
新定款策定から5年、改めて定款、ならびに施行細則を見直してみますと、いくつかの不具合を認めました。そのひとつが、代議員数であります。定款17条第1項では、「概ね正会員30人の中から1人の割合をもって選出される」と規定されているにも拘わらず、代議員選挙規定第4条では、「会員数が35人までの選挙区では1人とし、35人を超える選挙区では2人とする」とあります。旧法人の選挙規定がそのまま残された形になっていました。理事会で協議した結果、公平性も加味して、第17条第1項を「正会員50人の中から1人」と改正することに決定しました。併せて、予備代議員の代理出席が可能となるよう、第20条の項目も整備することにしました。さらに、増え続ける理事の業務量を軽減すべく「理事の定数を2名増員する」一方で、法人の関係者以外から選任する監事は不要と判断し、「監事は2人以内」と改めることにしました。その他、決算関係書類についても文言の整理を行うこととし、3月26日の臨時代議員会に上程した結果、すべて承認されました。4月1日より施行されています。
3.救急医療について
喫緊の課題として、ゴールデンウィーク(10連休)中の救急医療体制をどのように構築していくかがあります。まずは、実態を把握すべく、市内すべての医療機関に対して連休中の医療体制のアンケート調査を実施しました。その結果、すべての区において多くの診療所が開かれ、また、複数の病院が診療を行う予定であることが判明しました。この結果を参考にしながら、一次救急から三次救急を担う医療関係者や行政担当者を交えて検討した結果、新潟市急患診療センター、西蒲原地区休日夜間急患センター、二次輪番体制、三次救急の医療体制が作成されました。関係者の皆様のご協力に感謝申し上げます。今後は、行政が中心となって、正しい情報を広く一般市民に通知し、無事に乗り切れることを願っております。
4.在宅医療について
昨年度、計4回の「地域医療構想策定会議」を開催した結果、新潟地域の病院・有床診療所の現状、ならびに将来像を共有することができました。新年度は、これに「居宅等」が加わります。自宅への訪問診療だけでなく、施設に入居されている方々の診療や急変時の対策、看取りまで、広範囲の議論が必要となります。そのためには、介護施設や有料老人ホーム等の実態把握が必須であり、区単位、あるいは中学校区単位での議論が必要と考えます。関係者の膨大な時間と労力を費やすことになりますので、市民(患者)にとっても医療・介護関係者にとっても実のある議論がなされるよう、医師会がリーダーシップをとっていく所存です。
5.医師の働き方改革について
この4月から、「改正労働基準法」が適応されます。しかし、医師については応召義務などの特殊性があることから、2019年3月までに「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)で決定し、5年後(2024年度)から適応することになりました。
医師の時間外労働の上限については、「原則として年960時間以内・月100時間未満(A水準)」とし、「救急医療機関など地域医療確保のために必要な水準(B水準)と集中的技能向上のための水準(C水準)は、特例で年1,860時間以内」とするものであります。なお、「B水準については、医師偏在対策の実施状況等を踏まえて2035年度末をめどに廃止することについて、検討を行うことを法令上明記する」としました。
時間外労働上限ばかりが強調されていますが、その根底には地方の医師不足問題があり、医師偏在対策が解消されない限りは根本的な解決には至りません。患者の受療行動を正確に把握しつつ、タスク・シフティングやイノベーションを活用し、すべての医療機関が一体となって対応していく姿勢が必要です。
6.消費税10%導入について
10月から、消費税10%が導入されようとしています。平成30年8月29日、三師会・四病院団体協議会は、連名で、「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言」を公表しました。ところが、土壇場の12月19日になって、三師会・四病協の合同記者会見が行われ、日医の見解として、「これまでと同様の方法により、診療報酬への上乗せ対応を精緻化する形で全額補填する。そして、実際の補填状況を定期的に継続して検証し、必要に応じて見直してゆく」ことが発表されました。さらに、設備投資への支援措置や、医療情報化支援基金の創設、地域医療介護総合確保基金(医療分)の100億円積み増しという予算措置を加えて、「医療に係る消費税問題は解決した」との見解を表明しました。しかし、さらなる消費税増税が行われた時のことを考えれば、これで消費税問題が完全決着したとは思えませんので、今後も詳細な検証を繰り返し、よりよい方策を検討していくことが肝要と考えます。
新年度は、元号改正に始まり、激動の年になりそうです。しっかりと地に足をつけて、臨時代議員会で承認をいただいた事業計画に則り、会務を遂行してまいります。さらに、国の施策をタイムリーに把握し、その真意を汲み取り、当会の立ち位置と今後の方向性を見誤らないよう対処していく所存です。
これからも会員の先生方のご支援・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
(平成31年5月号)