新潟県健康づくりスポーツ医科学センター長 荒川正昭
当センターは、平成14(2002)年、新潟県(平山知事)が、FIFAワールドカップを契機に建設したサッカー場(ビックスワン)内に県直営の施設として設立されました。平成19(2007)年、県(泉田知事)は、センターに指定管理者制度を適応し、現在まで、新潟県スポーツ協会(当時は体育協会)が指定管理者として運営を委託されています。
この間、県民の健康づくりとスポーツ振興の拠点として、(1)生活習慣病・メタボリックシンドロームやその予備軍の方々の生活習慣の改善、(2)中・高校競技選手の競技力向上を、2本の柱として活動してきました。スタッフの殆どは非常勤で、人数も限られていますが、日常業務に埋没することなく、研究、啓発活動も行ってきました。これには、新潟大学、関連施設の医師、コメディカルスタッフ、運動・栄養専門職の方々の御支援がありました。改めて、関係各位にお礼申し上げます。
健康づくりでは、生活習慣しっかり改善コース(始めに医学検査、体力測定、プログラム設定を行い、週1日はセンターで講義、運動、栄養実習などを行い、他の日は自宅あるいはセンターで実践、12週後に成果を判定)と、健康サポート個別コース(始めにセンターで指導を受け、自宅あるいはセンターで実践、3-6カ月後に成果を判定)を実施し、コース修了後も相談を受けています。受講者の多くは、何らかの疾患で治療を受けていますが、主治医の情報、判断を頂くとともに、コースの結果も報告しています。コースには、医師、看護師が常在して、安全確保、緊急対応に努めています。また、コースに入る動機づけとして、体組成測定、基礎体力測定、親子体力測定、ストレッチ個別指導、栄養・食事個別指導などを行っています。
競技力向上は、医学検査、体力測定、動作分析、競技力向上相談などを中心に、競技の特性を踏まえて指導しています。医学検査は、身体計測、体組成測定、尿・血液検査、心電図、呼吸機能、診察により、心身の状態を判断して、体力測定の可否を判断します。体力測定では、バイクでかなりの重量負荷をかけてhigh power(短距離走に相当) 、middle power(中距離走に相当)を、さらにトレッドミルで体力の限界まで走ってlow power(持久力をみる、長距離走に相当)を測定しますので、安全管理には特に留意して、医師、看護師が常時心電図、呼吸状況、全身状態を監視して、限界直前submaximalにdoctor stopをかけています。また、スポーツによる運動器障碍、内科疾患(運動喘息、貧血、不整脈、肝腎障害など)の相談にも対応しています。
この二つの事業は、医療の関与が極めて大きく、新潟大学、関連施設から内科、整形外科の医師を派遣していただいています。センターには診療所を設置して、これらに対応しています。
研究も、センターの重要な使命ですが、大学等と共同して地道に進めています。測定で得られたデーターを分析検討して、関連学会、専門誌に発表しています。スタッフには、毎年学会発表1回、(可能な限り努力して)論文執筆1編を目指して、努力してほしいと願っています。県民への情報発信も大切な使命です。健康、スポーツの両分野で、県民講座、体験学習、出張講座・実習などを、私達の体験をベースに実践しています。センターでは、情報コーナー、フィットネスホール(コースで使用している)を一般に開放しています。
医師会の皆様も、一度お出でになって身体を動かし、一汗かいてみませんか。お待ちしています。
(令和2年2月号)