医療法人恵生会 南浜病院 院長 金子 尚史
平成31年4月1日より南浜病院の院長に就任いたしました。私は平成8年に新潟大学を卒業して飯田眞教授門下の新潟大学医学部精神医学教室に入局し、平成10年からは染矢俊幸教授にご指導いただきました。新潟県内の精神科病院、総合病院精神科、新潟大学医歯学総合病院等に勤務したのち、平成24年に教室を離れ、他病院での勤務を経て現在に至ります。
当院は昭和30年7月20日開設で、精神科病院として新潟県では4番目、内、新潟市では現・新潟信愛病院に次ぐ2番目の開設と聞いております。現会長の鈴木保穂先生が初代院長として開設、運営、診療にご尽力され、現在では病床数285床、そのうち精神科救急入院料病棟〔いわゆる(精神科)スーパー救急病棟〕60床を有しています。県内精神科救急システムにおける北圏域〔新潟市および下越地方(燕市、弥彦村を除く)、人口約120万人〕内の自傷他害の恐れのある方の入院(措置入院)の約4割、時間外入院の約3割を引き受け、精神科救急当番は年間169日に上るなど(いずれも平成30年度)、圏域内の精神科救急の基幹病院として中核的な役割を果たすとともに、地域移行支援・退院促進や心理社会的治療にも力を入れております。
ここで「いわゆる(精神科)スーパー救急病棟」と、もって回った言い方をしましたが、その精神科救急入院料病棟の人員配置は、医師16:1、看護師10:1、精神保健福祉士2名以上と、通常の精神病床の医師48:1、看護師20:1以上に比べれば確かに高規格ですが、精神病床以外のいわゆる一般病床からみると亜急性期から回復期に相当するものでしかありません。院長就任後、市の消防局の方とお話しした機会に実情を説明したところ、「スーパー救急というから、どれほどのものかと思ったら…」と大変失望されており、誠に申しわけない思いをしたものです。
もちろん、提供する医療の内容は全く違うわけですから一概に比較はできませんが、精神科救急においては興奮や多動および希死念慮などの著しい方がおられ、治療や入院の必要性に対する理解も得られない場合もあります。人権に配慮し安全に医療を行うためには、より一層の人員の充実が必要と思います。また、精神科医療においては症状の把握は基本的に会話と行動観察にて行います。会話による心理的ケアも重要であり、そのような面での人員の充実も求められます。精神科病床の削減は大いに賛成ですが、それは単に病床を減らすものではなく、限られた精神科の医療資源を救急・急性期の「医療」に振り分け充実させるとともに、24時間体制での包括型地域生活支援プログラムを含めた入院外医療体制の整備や十分なサポートの整った居住施設、就労・社会参加支援の充実なども無くしては叶えられないものと思っております。
しかし、現状はすぐには変わりません。現状を変える取り組みや働きかけも行いたいと考えておりますが、「精神科特例」という名の例外がなくなり、精神科疾患を持つ方たちが必要とされる医療を十分な環境の中で受けて頂けるようになるまで、与えられたものの中で努力していきたいと思います。何卒よろしくお願いいたします。
(令和2年3月号)