新潟大学長 牛木 辰男
令和2(2020)年2月1日付けで新潟大学長を拝命しました。平成16(2014)年から4年間は医学部長を務めましたので、その節は市の医師会の皆様には大変お世話になりました。また今後ともどうぞよろしくお願いします。
新潟大学の前身は、150年ほど前にさかのぼることができます。とくに、明治3(1870)年に設置された共立病院に端を発し、明治43(1910)年に開校した官立新潟医学専門学校が、新潟大学医学部の前身であり、新潟大学の母体でもあります。この官立新潟医学専門学校は、大正11(1922)年に旧制新潟医科大学に昇格、昭和24(1949)年5月には旧制新潟高校を始めとした複数の学校と統合されて、新制国立大学としての新潟大学が発足しました。したがって昨年で、新潟大学としては70周年の区切りを迎えたことになります。
現在は、人文社会系の4学部(人文学部、教育学部、法学部、経済学部)、自然科学系の3学部(理学部、工学部、農学部)、医歯学系の2学部(医学部、歯学部)に加え、新たな形の創生学部が加わり10学部となり、さらに、今年度から人文系学部の改組により経済学部が経済科学部として新たなスタートを切っています。また、これら学部のほかに、5つの大学院研究科(教育実践学研究科、現代社会文化研究科、自然科学研究科、医歯学総合研究科、保健学研究科)と2つの附置研究所(脳研究所、災害・復興科学研究所)をもち、研究志向の大学としての機能を果たすとともに、さらに医歯学総合病院により新潟県全域の医療の中核を担っています。
昨今の国立大学の於かれた現状は、なかなか厳しく、大きな変革の中で競争と経営改革の波が訪れています。このような時代には、次世代の「日本の大学」の役割を常に考えることが必要ですし、明確なヴィジョンと自由な発想のもとに、新潟大学としての「個性と魅力」を見出し、それを強く押し出していくことが必要です。これから訪れるであろう、予測が不能で「不確実な」未来社会を見据えて、国際社会の中で、地域も含めた社会の発展をイメージし、そのために必要な高度な人材を、社会と連携しながら育成すること、それこそが「知の拠点」「知の自由空間」である国立大学の現代的な使命、新潟大学の使命であると思います。最近、新潟大学では、いくつかの全学共同教育研究組織(環東アジア研究センター、佐渡自然共生科学センター、日本酒学センター)を発足させましたが、こうした組織も、今述べた理念のもとで社会に開かれた学際的な研究環境の創成を目指すものといえます。
さらに、新潟大学は、日本海対岸のアジアと、その向こうにある世界全体へと開かれた、特色ある日本の教育研究拠点としての窓口、すなわち「知のゲートウエイ」としての役割をさらに明確にし、ますます活発な人材交流と頭脳循環を図り、魅力ある活動を展開していきたいと思います。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中が厳しい状況にありますが、この難局についても、新潟大学のリソースを最大限生かしながら関わっていきたいと思いますし、それを乗り越えながら、現代と未来に貢献する大学づくりをしていきたいものです。
医師会の皆様におかれましては、これまでの医学・医療の領域に止まらず、多方面で協働できることがあると思いますので、今後ともご指導・ご協力を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。