新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児外科学分野 教授 木下義晶
このたび、令和2年1月に新潟大学大学院医歯学総合研究科小児外科学分野教授を拝命いたしました。誌面をお借りして、小児外科医療の今昔についてご紹介をかねてご挨拶申し上げます。
「小児」の「外科」ですからその名の通りこどもの病気に対して外科治療を行う専門領域のことです。世界の歴史を紐解きますと「肥厚性幽門狭窄症」という今では小児外科日常疾患に位置づけられるものも最初の成功例は1907年であり、それから100年余りしかたっていません。日本では1903年に宇野朗先生が日本で小児外科という言葉を初めて論文で使用されております。本邦で最初の手術成功例として報告されたのは、「小腸閉鎖症」が1952年、「胆道閉鎖症」が1959年、「食道閉鎖症」が1960年であり、小児外科が診療科として設立された歴史は、1966年の順天堂大学、1971年の東京大学、1976年の九州大学、そして、1981年の新潟大学です。日本の小児外科医療は欧米の後塵を拝しながらでありますが、50年余りの歴史を刻んできました。しかしこの50年の進歩は目覚ましく、その中でも新潟大学は本邦の小児外科医療では先駆的な道を歩んできました。
現在の小児外科医療は6つの柱となる領域に支えられていると考えます。即ち、新生児外科疾患、小児呼吸器・消化器疾患、小児固形がん、小児泌尿・生殖器疾患、小児臓器移植、低侵襲手術です。新生児外科疾患、小児固形がんなどの領域は50年前は死亡率が全患者の60%を超える状況でした。この間、治療成績は著しく改善し、現在では救命はもちろんのことその後のQOLを考慮した治療を行うことが次の使命です。それは小切開や内視鏡手術などによる低侵襲手術であり、また新しい治療である臓器移植などであります。
小児外科医のかかわる領域は広いがゆえに、他の領域の診療科との連携は大変重要で、特に産婦人科、小児科、小児外科の三位一体医療が必須の周産期医療、外科治療の必要な臓器の局在や新規技術の導入の必要性などによっては一般成人外科や他の外科領域の診療科とのコラボレーションがしばしば必要です。大学には全ての診療科がそろっており、連携を行うための垣根も低く、患者さんに最良の医療が提供できていると感じます。
いつでもお気軽に小児外科診療科へのご相談、ご紹介をよろしくお願い申し上げます。
(令和2年6月号)