新潟大学大学院医歯学総合研究科 救命救急医学分野 教授 西山 慶
この度、令和3年1月1日付けで新潟大学大学院医歯学総合研究科救命救急医学分野の教授を拝命いたしましたので、新潟市医師会会員の先生方に就任のご挨拶を申し上げます。
私は良寛和尚で有名な円通寺という古刹のある、瀬戸内の海の見える田舎町で生まれ育ち、四国松山の中学高校で学び、平成7年に京都大学医学部を卒業しました。卒業後は、福岡の小倉記念病院で循環器内科の研修を行い、京都大学に戻ったあとは救急医学講座の設立に伴い初代医局長として講座の立ち上げを行い、そののち国立病院機構京都医療センターの救命救急センター長として救急集中治療領域を中心に臨床、研究、教育にあたってきました。この間、多くの先生方よりご指導、ご協力を賜りました。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。
私の母方祖父である三上芳雄(旧姓佐藤、元岡山大学医学部長、法医学者でした)は新潟県村上市の出身でした(祖父の母方は本間姓で、当講座の本間宙特任准教授(村上市本間医院院長)は遠縁にあたります)。昭和大恐慌の中、姉夫婦の養子となり、京都(中学)・熊本(高校、大学)・台湾(祖母と結婚)・久留米・ジャカルタ・鹿児島(母が生まれる)・岡山(私が生まれる)と各地を転任した祖父ですが、このたび孫である私が四国・福岡から京都を経て約100年ぶりに新潟に還ってくることとなり、歴史は廻り合うものであることを実感しています。
かさねて個人的な話で誠に恐縮ではございますが、昨年夏に母が亡くなり忌引きで休暇をいただいているときに新潟大学へのお話をいただき、これは縁なのではないかと思いアプライさせていただきました。今は昨年まで全く面識がなかった方々に囲まれる毎日ですが、なぜだか皆ずいぶん前からの知り合いのような気がして、毎日楽しく仕事をさせていただいております。
COVID19パンデミックを含めた社会情勢の変化により急性期疾患に対する診療システムは急速に変化しており、救急集中治療医がERにおける初期診療からICUにおける集中治療まで一貫して診療を行うシステムが日本全国で立ち上がってきています。ER中心であった米国の救急医ですらICUにおける集中治療への参加を開始してきており、日本型の救急集中治療というシステムが世界的に注目を浴びています。しかし残念ながら新潟地域は人口当たりの救急医専攻医数、集中治療専門医数、ICUベッド数ともに全国最下位レベルであり、早急な改善が必要であると考えています。幸いにも本年度県内で多くの若者が救急科専攻医のプログラムに参加し、また大学においては多彩な領域の専門医の資格をお持ちの先生方が集中治療マスターパッケージに参加していただいております。インテリジェンスに溢れた新潟の特性を活かし人材育成を図るとともに、個人的な研究テーマであるデータサイエンスを発展させICTやAIを用いたネットワーキングを諮ることにより新しい急性期医療のモデルを新潟地区に創造していきたいと考えております。会員の先生方におかれましては、今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(令和3年6月号)