済生会新潟病院 院長 本間 照
コロナの第四波が過ぎ、束の間の安寧かと思いきや、デルタ株へのさらなる注意喚起が叫ばれています。感染力が高いといわれる変異型ウイルスの蔓延を予防すべくワクチン接種の敷衍が急がれ、新潟市でも7月7日から64歳以下の方にワクチン接種券が発送される予定となりました。医師会の先生方におかれましても、日常診療が圧迫されて多忙な日々をお過ごしのことと思います。
私は、令和3年4月1日を以て済生会新潟病院長を拝命いたしました本間照と申します。どうぞよろしくお願いいたします。この場をお借りして一言ご挨拶を申し上げます。昭和59年に新潟大学医学部を卒業し、消化器内科学を専門として参りました。多くの諸先輩方にご指導頂き、同僚、後輩、職員の方々に支えられてまいりました。卒後30年も経ったある日、大先輩から「俺が来たからもう安心しなさい、とクランケに声をかけられる医者」というお話をいただき、臨床家としての目標をもう一度肝に銘ずることができました。済生会新潟病院には平成22年に着任し12年目となります。
コロナウイルスの感染拡大により、今まで「普通」だと思ってきたことが、これからは大きな思考の転換が必要と感じております。当院では一病棟ワンフロア全体をコロナ専用病棟とし、中等症までの患者さんに対応してきました。介護度の高い高齢患者さんを受け入れた際に口腔ケアに伴うと推察される、看護職員2名の感染がありましたが、スタッフの迅速な判断と対応により拡大を防ぐことができました。病院職員皆様の職業人としての勇気と本気には、本当にいつも掌を合わせたい気持ちです。
コロナ以前から、新潟市の救急医療体制は逼迫しており、救急隊が受け入れ先を4つ以上の病院に聞かなければ搬送先が決まらないということが1日6件もある、という状況です。多くはない医療資源をどうすれば有効に活用できるのか、関係者の心身の疲弊をどうやって最低限に抑えていくのか、皆さんと智慧を出し合ってしっかりした体制作りが必要です。そしてこれはもちろん、目前に迫っている医師の働き方改革にも深く関わってくる話になります。
現代の医学・医療の進歩は、あまりにも深く専門分化してしまい、昔と同じ医師数で医療現場全体をカバーするにはとても足りない状況が起きています。患者さんを、医療の対象としてはもちろん、社会の中の一個人として、全体から俯瞰できる力を持った総合診療医の育成が強く望まれる所以です。総合医としてのキャリアを積んでその道を極めることは、大変困難なことであり尊い事であると思います。また一方、先鋭の専門家として修練を積んできた人が60歳を過ぎ、医師としてのセカンドステージを迎えた時に、こんどは所謂ホスピタリスト、ジェネラリストとして望まれる場面はどんどん増えてくると思います。私たちは長く働き続けなければなりません。どこかでギアチェンジをして、総合診療に対応できる技能を習得する努力が必要になってくると思います。生涯学習、死ぬまでおベンキョウしなければいけませんね。
医療者として、人々・社会への奉仕・貢献の精神を忘れることなく邁進したいと思います。多くの困難な課題を、皆様と共に一つでも解決していきたいと思います。ご指導ご鞭撻を賜りますように、何卒よろしくお願い申し上げます。
(令和3年7月号)