新潟市医師会副会長 橋本 謹也
令和元年年末から始まった新型コロナウイルス感染症は、感染の消長を繰り返しながら、この原稿を書いている7月上旬からは第5波に向かって、首都圏を中心にまた徐々に患者数が増加しております。今年2月より始まった予防接種は、国の迷走を受けながらも、医療者や自治体の頑張りで接種数を徐々に増やしてきましたが、ここに来てワクチンの供給に急ブレーキが掛かり、再び混迷の状況に陥っております。何とか態勢を立て直して、少しでも早く平穏な日々の到来が待ち望まれております。このような状況の中、新潟市医師会員の先生方には、新型コロナの診療とワクチン接種に多大なるご協力を頂き心より御礼申し上げます。
さて、コロナ禍で小児科診療は大きな影響を受けました。手指消毒の励行やマスクの使用、三密の回避、不要不急の県外への移動自粛等の感染予防策が効いて、いわゆる風邪を始めとした呼吸器感染症が抑えられ、急性疾患を主な対象とする小児科外来受診者数は大きな落ち込みとなりました。冬場には毎年流行するインフルエンザの流行も見事に抑制されて、ダブルパンチの状態でした。急患診療センターも例外ではなくすべての科で大きな患者数の落ち込みがあり、小児科も半分以下に激減致しました。また、二次輪番病院への転送も患者数に見合った形で半分ほどに減少しております。
コロナ禍の先の新潟市の小児救急医療はどのようになっていくのでしょうか。まずは一次救急の要である急患診療センターです。新型コロナワクチンの接種とともに少しずつ自粛が緩み始めた結果でしょうか、昨年度は抑えられていたRSウイルス感染症が全国的に増加傾向となり、新潟でも感染拡大が始まりました。少しずつですが以前の小児科診療に戻りつつあり、元のようにはなりませんが、徐々に患者さんが増えてくるように思います。その様な中で、急患診療センター小児科の問題点であった出務医の高齢化問題は、平成29年度の小児科専任医の就任により一息ついた感があります。
一方、小児科の二次輪番病院体制は多いときは8病院体制で輪番を組んでおりましたが、2人体制の病院は負担が大きく、令和3年度からは6病院体制となりました。病院数減少に伴ってそれぞれの病院の負担が増す結果となり、体制維持が難しい局面を迎えております。
今後、新潟市の小児救急医療体制維持のため立ちはだかるのは、一つには2024年からの働き方改革の実施や新潟区域の地域医療構想等が大きく関連してくるものと思われます。一次救急を担う急患診療センターも、また二次輪番病院も大学からの医師の応援・派遣に大きく依存しているからです。二つには、新潟県は医師不足の県でありますが、小児科医も同様で、その中で県単位として小児医療を継続していくためには、病院小児科の集約化が求められております。しかしそれは、二次輪番を担当する病院のますますの減少に繋がる可能性があります。数年前より新潟県は「小児医療あり方検討会」を設置して、今後の小児医療の将来構想を検討しておりますが、できれば県内の小児科医が望む形の、こども病院を中核とした小児医療体制の再構築が必要と考えられます。その体制が作られることが、ひいては新潟市の小児救急医療体制にも繋がってくるものと考えます。時間はあまり残されておりませんが、注視していきたいと思います。
(令和3年8月号)