新潟市病院事業管理者・新潟市民病院長 大谷 哲也
令和3年4月1日より新潟市病院事業管理者・新潟市民病院長に就任しました大谷哲也です。この場をお借りしてあらためてご挨拶申し上げます。
私は三重県津市出身で高校卒業後京都大学工学部に入学し、2年後に新潟大学医学部に入学し昭和60年に卒業しました。卒後は新潟大学医学部外科教室に入局し、平成9年に新潟市民病院外科に赴任しました。副院長は7年間務めましたが患者総合支援センター設立、電子カルテ導入などの仕事に携わりました。三重県には2年に1度程度帰省しますが、冬でもコートなどを着ている人はおらず、自分だけ重装備ですっかり新潟での生活様式に馴染んでしまいました。
院長就任時には新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が医療情勢を大きく変化させていました。令和2年2月29日に第一号患者が当院に入院し令和3年8月上旬までに198例となり、重症は28例で15例に人工呼吸器による管理が行われました。三次救急医療とCOVID-19重症対応の両立を常時目指していますが、第5波ではコロナ用ICU4床がすぐに満床となり、また救命センターも混雑し医療逼迫に近い状況となっています。患者は若年層が主体となり、搬送後即挿管となったケースが続いています。感染症指定医療機関でCOVID-19重点医療機関ですが、パンデミックには対応していないため環境整備には苦労しています。旧病院では感染症病棟がありましたが新病院にはなく、有事に備える重要性について再考させられました。
COVID-19院内フェーズ分類が最初に作成され、各科別に中止できないコア業務と延期できる業務が分類され、業務は有病割合に応じてフェーズ別に運用されています。その結果令和2年度は病床利用率(−9%)、入院患者数(−11%)、外来患者延数(−5%)、手術数(−8%)と大幅な患者減となりました。外来患者はCOVID-19の患者増加時には減少し、明らかな受診差し控えが認められました。救急車搬入数も11%減少しましたが、重篤患者数は減少しませんでした。不要不急の受診差し控えが明らかですが、重篤患者が減少しなかったことより当院での診療が必要でなかった人が受診しなかったとも考えられます。今後の動向を見なければ分かりませんが、患者の受療行動が変わらずこのまま患者減の状態がパンデミック収束後も続く可能性はあると思います。地域医療構想の議論が進む中、当院でも戦略的ダウンサイジングに取り組むか検討が必要と思います。
医師の働き方改革は労働時間を中心に複数の指標を計測し、超過勤務の多い医師には毎月面接を行っています。パンデミックで患者減により超過勤務が短縮するだろうと期待しましたが、月平均で2時間弱しか短縮しませんでした。施設基準のため宿直すると超過勤務時間と計測されるため、患者対応が減少したとしても超過勤務時間には大きな変化がないと考えられます。その一方で、COVID-19対応による呼吸器内科・感染症内科・集中治療室担当の医師の負担増は明らかで、これら職員の労働時間の動向は注視していきたいと思います。
非常事態が依然として続きますが、ポストコロナの医療情勢を判断しながら地域医療にさらに貢献できる新潟市民病院を目指したいと思います。大変な時に院長になったとよく言われますが、数百年に1度のパンデミックに対応できることをむしろ僥倖であると感じ業務に取り組みたいと思います。新潟市医師会の皆様には今後ともご指導・ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
(令和3年9月号)