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新潟市医師会報より

新潟市医師会

臨床と研究の狭間で思うこと

新潟大学医歯学総合病院 総合周産期母子医療センター 教授 西島 浩二

新潟大学総合周産期母子医療センターの西島浩二と申します。新潟市医師会の皆さまには常日頃から大変お世話になっております。初めに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。さて、私が新潟大学総合周産期母子医療センター教授に就任してから1年が過ぎました。この1年はまさにコロナウイルスに翻弄された1年でした。そのコロナ禍も収束に向かったかと安堵したのも束の間、またぞろ新たな変異株がかつてないほどのスピード感で流行しています。ゴールの見えないマラソンを重石を付けたまま走らされているような、重く苦しい心境です。そのような状況で迎えた令和4年の年頭に、私はこれまでの医師人生を振り返る時間を持ちました。

まず、私にとって忘れ難い患者の診療経験を皆さまに聞いていただきたいと思います。その方を担当したのは、私が医師になって4年目のことでした。23歳の初産婦で、当時私が勤務していた病院の看護師でした。妊娠39週5日に陣痛発来のために入院となりました。その後分娩は順調に進行し、同日夜に3500gの男児を経腟分娩しました。ところが、児は第一啼泣直後に呼吸困難に陥り、そのまま新生児死亡となってしまいました。死因は胎脂による窒息でした。この患者の羊水には、直径1ないし1.5cmのコーンフレークのような形状をした胎脂が大量に浮遊していました。胎児の皮膚から剥がれた胎脂は羊水に溶け込んで存在するため、このような状態の胎脂を見ることは通常あり得ないことでした。当時の病理解剖記録には、「気管、両肺気管支、細気管支内腔は、胎脂により閉塞していた。両肺は、無気肺となっていた」と記載されています。出生児の気道を確保するために挿入された気管内チューブは、すぐに胎脂で閉塞してしまうため、何本も何本も交換されていました。私は、当番であった上級医から連絡を受けて分娩室に駆け付けましたが、小児科の先生方の処置を、ただ呆然と見ていることしかできませんでした。

本症例のような病態は胎便吸引症候群になぞらえて、胎脂吸引症候群と名付けられました。1985年のOhlssonらの報告に次いで、当時世界で2例目の報告となりました。それまでの私は、胎脂に対して何ら特別な感情を持ったことはありませんでした。しかしながら、この症例を契機に、児を死に至らしめる可能性がある胎脂というのはいったい何ものなのかと考え始めました。この症例の経験が、胎脂の存在に対する疑問に繋がり、私の研究の原点になりました。私はその後母校である福井大学で研究を続け、「胎脂は産道を滑りやすくするための単なる潤滑油ではなく(に留まらず)、羊水中に剥がれ落ちた後に胎児に嚥下され、肺サーファクタントと共に消化管の保護に関与する」ことを明らかにしました。先述した児は、このような生理機構が破綻したことにより新生児死亡に至ったものと推察しました。当時は、患者さんの悲しみを目の当たりにし、自分の無力さを嘆く日々を過ごすだけでしたが、この症例の経験がなければ、私が研究生活に入ることもなかったのではないかと思います。

実臨床は疑問の宝庫です。臨床の疑問から生じた課題を自らの手で解決することが研究の醍醐味だと感じています。今後も新潟市医師会の皆さまにご指導いただきながら、医局員と共に魅力的な周産期領域の研究を遂行して参りたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。

(令和4年2月号)

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