新潟市保健所長 高橋 善樹
2020年2月29日に新潟市で1例目の新型コロナウイルス患者発生を確認して以来、ここまで長期化するとはだれも思っていなかったことでしょう。世界史で勉強したスペイン風邪は別世界のことと思っていましたが、それを超えるような人類の有史の中で歴史に残る大感染症が世界を震撼させています。24時間旅客機が地球を飛び回り、瞬時に膨大な情報が世界を駆け巡るようになった現代。その一方で人類が築き上げてきた高度な医学・医薬などの英知をもってしても自然の脅威に未だ翻弄されています。
新型コロナウイルスは変異を繰り返し、一山越したと思ったら次の波が押し寄せ、昨年8月のデルタ株による第5波に引き続き本年1月にはオミクロン株による第6波となりました。現状ではワクチン未接種層たる子供たちの集団感染・クラスターの発生が目立って続いている一方で、「オミクロン株」の派生型BA・2への置き換わりも進んでおり、第5波までのような速やかな収束の形が見えず下がりきらないうちに、4月中旬には第6波の1月下旬の最大発生数を超える2峰性の発生状況を示し、これまでとは違う様相を呈しています。第2峰ではこれまでにない感染力により過去最大の陽性者の発生をみましたが、幸いワクチン未接種の子供たちは罹患しても重症化しにくいこと、一方でワクチン接種普及による成人や高齢者の重症化予防が功を奏し、県内および市内医療機関や県の医療調整本部のご苦労もあり、病床ひっ迫の回避という目的は達成されております。
5~11歳のワクチン接種も始まりましたが、引き続きワクチン接種による予防対策を進めるとともに、いまだ画期的な内服薬を含めた治療薬がない中、公衆衛生学的な予防、蔓延防止などの対策はまだまだ必要と思われ、行政としてその責務、役割の重要性を感じているところです。
オミクロン株は弱毒化したとはいえ依然として致死率はインフルエンザより高く、今後の扱いについては慎重に対応していかなければなりません。現在新型インフルエンザ等という2類相当の扱いとなっており、扱いの緩和も議論され始めましたが、公費の扱いなどを含めまだまだ時間を要するものと思われます。
この2年間で学んだことは、新型コロナウイルスは顔を変えながらこれからも長いお付き合いをしていかなければならない相手であるということです。押すべきところは押し、引くべきところは引きつつ、with Corona対応の社会を築いていかなければならない必要性に迫られているものと思います。今年のうちに画期的な経口治療薬が広く利用できるようになり、インフルエンザ並みとまではゆかなくとも、新型コロナウイルス感染症発生以前の人間らしい日常生活が送れる程度の感染症として扱われる世の中になることを切に願います。
最後に、ワクチン接種や治療の最前線で患者と対峙する医療現場を担う先生方のご意見を聞きながらより良い体制づくり・対応ができますよう、引き続きご支援・ご協力の程よろしくお願い申し上げます。
(令和4年5月号)