信楽園病院 病院長 田中 一
2022(令和4)年4月1日に社会福祉法人 新潟市社会事業協会 信楽園病院長に就任しました田中 一です。紙面をお借りし一言ご挨拶申し上げます。
私は秋田県湯沢市の出身で、1985(昭和60)年3月新潟大学医学部を卒業、新潟大学脳研究所神経内科に入局、信楽園病院には1998(平成10)年春に着任し現在に至ります。
信楽園病院は1931(昭和6)年に結核患者静養施設として開設されたのが始まりで、今年で創立92周年を迎えます。黎明期であった腎不全患者に対する透析医療を開始し半世紀以上となり、2006(平成18)年には現在の西区新通南に新築移転しました。
少子高齢化+転出超過による急激な人口構造の変化に伴い、地域の医療ニーズも大きく変化しつつあり、加えて新潟県は全国で最も医師不足が深刻な県でもあります。「医師働き方改革」が待ち構えており、労働時間の短縮など課題は山積しています。このような中ではありますが、当院は超急性期~急性期医療を中心とした高度専門的な医療を担う地域の中核病院として、これまで通り慢性期までワンストップの医療を提供できるよう尽力していきたいと考えています。
当院は外来血液浄化療法ベッド150床を有し、血液浄化療法では全国有数の拠点医療機関の一つです。また、脳卒中治療では県内で2施設のみの1次脳卒中センターコア施設の1つに認定され、24時間365日血栓回収治療を行える体制を整えています。2021年5月には新たな脳血管撮影装置(シーメンス社製 ARTIS icono D-Spin)を導入。2022年11月10日現在、国内で32台が稼働中で、新潟県では当院にのみ導入されています。最新医療機器を駆使し、1人でも多くの脳梗塞患者を予後良好な状態で救うべく、努力していきたいと思います。
病院名が示すように「信楽」の精神で創立以来90年余にわたり、「患者さんに信頼され、患者さんが心身ともに楽になる医療」を目指してきました。コロナ禍を経て、医師働き方改革が迫る中、病院経営においては患者さんのみならず職員の信頼と安全も大事であると再認識しました。良い医療を提供するには、働きやすい良好な職場環境が必要であり、そのためには健全な病院経営が前提となります。ただ現在は地域医療ニーズの変化、コロナ禍による医療負担増や受診控え、度重なる抑制的な診療報酬改定など、医療を取り巻く経営環境は厳しさを増すばかりです。しかしやまない雨はありません。ピンチをチャンスと捉え、今は様々な種をまく時期と考えています。
具体的には血液浄化療法の更なる充実と、脳梗塞超急性期治療の拡充・発展に向け動き出しています。また、健診や人間ドックの体制拡充、DX(デジタルトランスフォーメーション)などを活用した新時代の病病連携・病診連携の構築、地域包括ケアシステムの更なる効率的活用を図っていきます。
病院という組織はやはり「人」というリソースが最重要です。医師・看護師・多くの職種のプロフェッショナルが有機的に連携する、いわゆるチーム医療を基本に、職員間のスムーズでシームレスな連携なくしては良い医療は実践できません。また使命感、責任感あふれる有能な医療人も、心と体の安定がなければ能力を十分に発揮できません。ストレスも多い職場ですが、理想的なワーク・ライフ・バランスを保てるよう院内制度、規則、慣例などを見直し、医療従事者に選ばれる病院になれるよう検討を重ねています。
今後も引き続き新潟市の救急医療・地域医療に貢献できるよう努めてまいりますので宜しくお願い致します。
(令和5年2月号)