NPO法人新潟難病支援ネットワーク 理事長
新潟医療福祉大学 学長
西澤 正豊
平成27年(2015年)1月1日に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律(以下難病法)」は、法律で予定された5年目の見直しが新型コロナウイルスの蔓延のために遅れていましたが、令和4年(2022年)12月16日に改正案が公布されました。今回の改正は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」として、障害者総合支援法、精神保健福祉法、障害者雇用促進法、難病法、児童福祉法の関連部分全体が見直される大きな規模となっています。
全体の改正の趣旨は厚労省より、障害者の地域生活や就労の支援の強化等により、障害者の希望する生活を実現するため、①障害者の地域生活の支援体制の充実、②障害者の多様な就労ニーズに対する支援および障害者雇用の質の向上の推進、③精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備、④難病患者および小児慢性特定疾病児童に対する適切な医療の充実および療養生活支援の強化、⑤障害福祉サービス等、指定難病および小児慢性特定疾病についてのデータベースに関する規定の整備等の措置を講ずる、と説明されています。
筆者は厚労省で難病法の改正について議論する難病対策委員会委員を2022年6月まで務めていましたので、指定難病と小児慢性特定疾病の患者さんを対象とする今回の難病法、児童福祉法改正のポイントをご紹介します。
「難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実及び療養生活支援の強化」では、①難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する医療費助成について、助成開始の時期を申請日から重症化したと診断された日に前倒しする、②各種療養生活支援の円滑な利用及びデータ登録の促進を図るため、「登録者証」の発行を行うほか、難病相談支援センターと福祉・就労に関する支援を行う者の連携を推進するなど、難病患者の療養生活支援や小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を強化する、とされました。
医療費助成の開始時期は「重症度分類を満たしていることを診断した日」とされ、この申請日から原則1か月遡ることができるようになりました。入院その他の緊急治療が必要であった場合は最長3か月です。また各種の生活支援を円滑に利用可能とするため、「登録者証」を発行する事業が創設されます。申請の窓口となる市町村でマイナンバー連携による照会が原則です。さらに難病相談支援センターが連携すべき主体として、指定医療機関に加え、福祉や就労関係の支援機関も明記されました。加えて小児慢性の地域協議会も法定化され、指定難病と小児慢性の地域協議会間での連携努力義務が新設されました。
「障害福祉サービス等、指定難病及び小児慢性特定疾病についてのデータベース(DB)に関する規定の整備」では、障害、難病および小慢のDBについて、障害福祉サービス等や難病患者等の療養生活の質の向上に資するため、第三者提供の仕組み等の規定を整備する、となりました。DBの法的根拠を作り、国による情報収集と、都道府県の国への情報提供義務が規定されました。またDBの安全管理措置や第三者への提供ルール規定も新設され、他の公的DBとの連結解析も可能となりました。
施行期日は、DBは令和5年4月1日、指定難病・小児慢性特定疾病対策は令和5年10月1日です。難病法では今後、厚労大臣より「基本方針」が示されます。厚労省の具体的な方針がここに書き込まれますので、改めて確認が必要です。
(令和5年5月号)