新潟市医師会 会長
岡田 潔
コロナ禍の3年間は、新潟市医師会長の浦野先生を中心に役員間で様々な案件を分担していました。私は副会長でしたから浦野先生とは、ほぼ365日毎日、SNSで連絡を取り合っていました。ホテル療養に始まり、発熱外来、ワクチン接種、そして自宅療養当番制度。世界中がものすごいスピードで進んでいたので、話し合う前に、例えそれが正解でなくとも結論は出さなければいけない、そんな状況でした。結果的には、新潟県のコロナワクチン接種率は第3位、コロナ経口ウイルス薬の処方率第3位、コロナ陽性者の少なさ第3位、自宅療養死0、コロナ死亡率全国最低。これは新潟県、そして県内の医療資源が集中している新潟市の宝物です。
今年1月に新潟市医師会理事会で推薦を受け、6月28日の新潟市医師会代議員会で、私は医師会長に選ばれました。コロナ禍では、まるで新幹線のように町並みや風景は見えませんでした。今は5類感染症となり、家並み一軒一軒や人々の表情までよく見える路面電車に乗っている感覚です。
コロナ禍では事業内容も予算規模も大幅に拡大しました。しかし、5類感染症へ移行して、潤沢だったコロナ助成金やコロナ特例診療報酬などが大幅にカットされ、医師会の収支バランスは一気に縮小しています。なので、まず事業と予算を再確認することを優先にしたいです。
そこで考えてみました。あえて歴史的教訓から、有名な3つの政策を真似てみたいと考えています。
小さな政府
マーガレット・サッチャーなんて、今の若い先生がたはご存知ないでしょう。1980年代に当時のイギリス首相マーガレット・サッチャーが掲げたのがサッチャリズム、「小さな政府」。具体的には減税、民営化、規制緩和、金融引締めなどを柱とする政策です。
新潟市医師会の安定収入は会員の先生がたから支払われる会費で、年間1億円くらいなので、無床診療所の年間平均売上とほぼ同じくらいです。それに対して新潟市医師会の職員数は普通の開業医より多いので、支出では人件費の割合が高くなります。多岐に渡って巨大化した医師会活動を少しずつ見直して、より重要なポイントにはより丁寧に時間をかけるように、「小さな医師会」への思いをめぐらせています。
脱線しますが『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』は、夫を亡くし孤独な晩年を迎えた元イギリス首相マーガレット・サッチャーが人生を振り返る、2011年の素晴らしいイギリス映画です。主演のメリル・ストリープは3つ目のオスカー像を手にしました。一番印象的な台詞はフォークランド戦争の時の「戦わなかった日など一日もないわ」です。
ゲティスバーグ演説
エイブラハム・リンカーンの「人民の人民による人民のための政治」。誰もが参加したくなるような、参加すれば何かいいことがある、幸せな気持ちになれる、そんな医師会にしたいです。子供じみてると思われるかもしれませんが、これも大切だと思っています。新潟市医師会には、やる気満々の職員が何人もいることが最大の強みです。
トロイカ体制
旧ロシアの政策です。名前の由来は3頭立ての馬そりであるトロイカなのですが、レーニンの死後、スターリン、ジノヴィエフ、カーメネフによって作られた集団指導体制のことです。例えば、急患診療センターの電子カルテ導入は、副会長の大滝先生のライフワークなので舵取りを任せます。山本先生にも副会長として、専門のワクチンを始めとする子宮頚がん対策には全力投球してもらいます。すべてを医師会長が行うのではなく、適材適所の役割分担にしていきたいです。
まだ抽象的で、不格好なものしか思いつきませんが。楽しい医師会を、これから会員と職員の皆さんとともに作っていきましょう。