新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター センター長
成田 一衛
新潟市医師会の皆様には平素よりお世話になっております。私は、本年3月末をもって新潟大学腎・膠原病内科学教授を退任し、公益財団法人新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター(以下医科学センター)に勤務しております成田と申します。当センターはビッグスワンスタジアム1階で診療所を併設しており、医師会12班に所属しております。私は、1983(昭和58)年新潟大学を卒業し、大学在籍中は第二内科学教室、腎・膠原病内科、呼吸器・感染症内科の皆様をはじめ、多くの医師会の皆様からご支援・ご指導を頂いて参りました。大学を退いた今、改めて皆様から頂いてきた温情を実感するとともに、心から感謝しております。
さて、当医科学センターは、新潟県民の健康づくりを支援すると同時に、県のスポーツ振興を図る拠点として平成14(2002)年に新潟県が設立しました。当初は県の直営でしたが、平成19年以降指定管理制度に移行し、現在まで新潟県スポーツ協会(旧体育協会)が4期にわたり運営してきました。主な事業は、①生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者や予備軍を対象とした栄養(食事)、運動、休養の指導と実践、医療相談を行い、生活の質(QOL)の向上を目指す、②日本、世界に挑戦するアスリートの身体機能測定、動作分析、障害の診断と治療(内科、整形外科、リハビリテーション科)、栄養指導、またメンタルトレーニングを通して競技力向上を支援する、③得られたデータを解析、検証して講演会・学会・論文発表等を通じて県民の健康増進に寄与し関係者の研修・啓発に貢献することです。詳細はホームページhttps://ken-supo.jpをご参照下さい。
3ヶ月生活習慣しっかり改善コースでは、様々な身体的・社会的背景をもつ利用者の個別の状況に対応して、きめ細かい目標設定と運動・栄養の指導を実践し、参加者全員が何らかの改善を認めます。生活習慣病などで医療機関に通院している患者さんが利用することが多く、紹介状を通して医療情報の共有を行います。連携頂いた先生方からは、“明らかに生活習慣が改善していて素晴らしい”とのコメントを頂くことがあります。当センターでしかできないことだと思いますし、この事業をより充実させたいと考えています。普段の診療に加え、当センターの機能を活用して頂くよう、是非患者さんをご紹介頂ければ幸いです。
スポーツ医科学も活発に取り組んでいます。バトミントン、バスケット、距離スキー、陸上、柔道、フェンシング、野球などの県内各地の中学、高校生チームが訪れ、一般的な体力測定に加え、脚筋力、ローパワー(最大酸素消費量)、ハイパワー(最大無酸素パワー)、ミドルパワー(無酸素性持久力)などの精密な体力測定を行っています。これらの測定を通して、課題を明確化し、経年的な成長を科学的に確認することができます。彼らが国内外で活躍することを期待しています。職員一同、これらの活動のスキルをさらに高めていきたいと思いますし、そのためにもより多くの競技やジャンルでの活用をお願いします。これらの活動を医療面で支えることができるのも当センターの特徴であり、引き続き各診療科の医師の協力をお願いしたいと思います。
医科学センター設立当初からの基本理念を継続・発展させるとともに、人口高齢化や健康スポーツの普及など社会のニーズの変化にも適切かつ迅速に対応して参ります。関係各位の医科学センターへの御支援と御鞭撻をお願いし、また医師会の益々の発展を祈念し巻頭言と致します。
(令和6年12月号)