新潟市医師会 会長
岡田 潔
私が今、危惧していることは、コロナでもない、地域包括ケアシステムでもない、救急医療体制でもありません。全国の病院のうち7割が赤字!ということ、これが一番目です。日本病院会などの合同調査「2024年度診療報酬改定後の病院経営状況」では医業利益の赤字病院割合が69.0%まで増加しています。
二番目ですが、リフィル処方箋は2022年度改定、生活習慣病管理料(Ⅱ)は2024年度改定において、中医協での厳しい議論の結果、いずれも大臣折衝で最終決定された忸怩(じくじ)たる思いのある項目です。
三番目。2025年4月より、かかりつけ医機能報告制度が施行されましたが、かかりつけ医はあくまで国民が選ぶものです。財務省が主張する、「国民にかかりつけ医を持つことの義務付け」、「フリーアクセスの阻害に繋がるかかりつけ医の制度化」や「かかりつけ医登録による包括払いの拡大」には明確に反対していかなければなりません。一つの医療機関ですべて対応するのではなく「地域を面で支える」ためにも、より良いかかりつけ医機能報告制度にしていきましょう。
いずれも、「骨太の方針2021」に書かれた社会保障費は賃金・物価の上昇に応じず、高齢化による増加分に収めるという、いわゆる「目安対応」が根本原因です。日本医師会は2026年度診療報酬改定に向けて、「骨太の方針2025」で、この「目安対応」が廃止されるよう政府・与党へ全力で要望しています。財務省主導による社会保障費削減の圧力と急速な高齢化・人口減少により、わが国の医療・介護・福祉が危機に直面する中で、現場の声を「伝え」必要な政策を国民に「届ける」ことができる代表を国政に送り出すことが、とても重要な意味を持ちます。
重要な医療政策は政治で決まる!
2025年7月に予定されている参議院比例代表選挙に向けて、日本医師連盟は、現副委員長(日本医師会副会長)の釜萢敏(かまやち さとし)先生を、組織内候補として擁立することを決定しました。しかし、現時点では極めて厳しい状況と社会情勢です。「かまやち」先生は、1978年に日本医科大学を卒業され、群馬県で小児科医として地域医療に尽力されてきました。また、日本医師会副会長として、現場の声を政策に反映するため全国を巡り精力的に活動してこられました。
日本医師会の会員数は、2024年度の調査で17万7,383人と過去最多を記録しました。しかし、私たちの考える医療政策を実現させるためには、医師だけではなく、ご家族や地域社会を含めた広範なご理解とご協力が欠かせません。
参議院の比例代表選挙では、政党名でなく、候補者の氏名を記載して投票することができます。この制度では、同じ政党から立候補した候補者の中で、どれだけ個人名で投票されたかが当落を決めることになります。
「かまやち」先生は難しい名前なので、「かっぱの『かまやち』」というユニークなキャッチフレーズをご自身のアイディアで考案されました。失礼千万な巻頭言のタイトルの所以です。実際にお会いになれば、その風貌と併せて、皆様には親近感を込めて納得していただけると思います。