新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎研究センター 腎・膠原病内科学分野 教授
山本 卓
ご挨拶
新潟市医師会の先生方におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。このたび令和7年1月1日付で、新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター 腎・膠原病内科学分野の教授を拝命いたしました山本卓と申します。腎・膠原病内科学分野の発展を通じて、内科医療に貢献できる人材の育成に努めてまいります。今後とも新潟市医師会の先生方のご指導・ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
慢性腎臓病(CKD)の現況と対策
慢性腎臓病(CKD)の現況と課題を概説します。CKDは、GFR(糸球体濾過量)が60mL/min/1.73m²未満、または尿異常などの腎障害が3か月以上持続する場合に診断されます。最近の調査では、成人の5人に1人がCKDに該当するとされています。
GFRは加齢により緩やかに低下しますが、高度な低下や尿異常が認められる場合は腎疾患の可能性があり、専門医の診療が必要です。重症度に応じて腎生検などを行い、治療方針を検討します。新潟県では中~高度の蛋白尿に対してはかかりつけ医の受診を、さらに腎機能低下が伴う場合は腎専門医の受診を推奨しています。初期対応として血液・尿検査を実施いただき、異常が持続する場合は腎専門医へのご紹介をお願いいたします。
CKDの治療は進歩しています。薬物療法ではRAS阻害薬に加え、近年はSGLT2阻害薬やMRAの腎保護効果も報告され、臨床応用が進んでいます。栄養療法では、病態栄養学講座の研究により、低たんぱく質ごはんの導入で食事療法の遵守率が向上することが示されています。透析療法ではオンラインHDFの普及により、症状緩和や生命予後の改善も期待されています。さらに、腎性貧血にはHIF-PH阻害薬、副甲状腺機能亢進症にはカルシミメティクス、皮膚掻痒症にはκ受容体作動薬、透析アミロイドーシスにはβ2ミクログロブリン吸着カラムなど、合併症治療も進歩しています。
一方で、CKDマネジメントではADLやQOLへの配慮も重要視され、近年はADLやQOLが良好でない患者に対して、腎代替療法を行わない選択も増えています。保存的腎臓療法では、透析を行わずにCKDの全身管理と緩和ケアを行います。治療選択にあたっては、患者・家族・医療者間で十分に相談し、最適な方針を決定します。専門的な知識を要することも多く、必要に応じて腎専門医にご相談ください。
CKDの早期発見と治療には地域連携が不可欠です。新潟県では、糖尿病性腎症重症化予防プログラムにより、特定保健指導や医療受診が必要な方の早期抽出を進めています。今後もかかりつけ医と専門医の連携により、原疾患の診断・治療、栄養指導、腎代替療法や保存的療法の選択を行ってまいります。
腎研究センターの取り組み
腎・膠原病内科学分野では、腎疾患・膠原病に精通し、内科全般に対応できる医師の育成を進めております。また当分野は、腎研究センターの臨床部門を担当しています。センターでは、臨床・基礎・トランスレーショナルリサーチの各部門が連携し、独自性ある研究成果の創出を目指しております。とくに臨床研究の推進にあたっては、新潟市医師会の皆様のご理解とご協力を賜りたく、心よりお願い申し上げます。
(令和7年7月号)