新潟大学大学院医歯学総合研究科 がん免疫学分野 教授
金関 貴幸
このたび2025年7月1日付で、新潟大学大学院医歯学総合研究科がん免疫学分野の教授を拝命いたしました。長い歴史と学術的伝統を有する本学において教室を担う機会を与えていただき、身に余る光栄であると同時に、責務の重さを強く感じております。この場をお借りして、新潟市医師会の皆様へご挨拶を申し上げます。
私は北海道に生まれ、札幌医科大学を卒業いたしました。医師としての出発点は臨床の現場でしたが、診療を重ねるなかで「なぜ病は起こるのか」「生体はどこまで自らを守れるのか」という根源的な問いに惹かれ、研究の世界へと歩みを進めることになりました。とりわけ、患者自身が有する免疫の力によってがんを制御できる可能性に魅了され、同大学病理学第一講座の門を叩きました。当時は、がん免疫治療に対する臨床的裏付けは乏しく、どこか懐疑的な空気が支配的な時代でしたが、恩師である佐藤昇志名誉教授のもと、自由闊達な研究環境に身を置くことができました。その後、米国西海岸のカリフォルニア大学バークレイ校へ留学し、免疫学者であるNilabh Shastri教授に師事しました。卓越した洞察力と人間的魅力、そして独特のユーモアを併せ持つ同教授との出会いは、私の人生に決定的な影響を与えました。ここでの研究経験は研究者としての私の原点となっています。帰国後は札幌医科大学に戻り、教員や大学院生の皆様と共に研究に取り組み、現在に至っております。
本学においては、まず基礎医学講座として期待される役割を確実に果たすことを第一と考えています。研究面では、これまで培ってきた知見と技術を基盤に、がんに対する免疫応答の本質的理解と、新たながん免疫医療の創出を目標に掲げています。免疫チェックポイント阻害薬の登場により、がん免疫治療は広く社会に認知されるようになりましたが、奏効率の限界、適応がん種の制約、副作用、治療効果を予測するバイオマーカーの不足など、未解決の課題は少なくありません。私たちは、T細胞ががん細胞を識別する鍵となる「がん抗原」に注目し、免疫ペプチドミクスをはじめとする先端的解析技術を用いて、抗原の実体と免疫応答を単一細胞レベルで解明する研究を進めています。得られた知見は、ワクチンや細胞治療など多様な治療モダリティへと展開可能であり、次世代がん医療の創生につながる可能性があると考えております。国内外の研究機関との連携を深め、学際的かつ国際的な共同研究も積極的に推進してまいります。
ここ新潟は、私にとって職務面のみならず生活面においても新たな挑戦の地となりそうです。まだ不慣れな点も多く、ご迷惑をおかけしてばかりですが、一歩一歩前進したいと思っております。教室の基盤を固め、将来的には病理学を基軸とした世界水準の研究拠点へと発展させていきたいと考えています。また基礎と臨床をつなぎ、研究マインドを兼ね備えた医師・研究者の育成に力を注ぎます。若い世代には、知的興奮に満ちた研究体験を提供できればと思っております。
皆様におかれましては、今後とも変わらぬご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げ、就任のご挨拶とさせて頂きます。
(令和8年3月号)