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新潟市医師会報より

新潟市医師会

次世代の命を守る「共創」の架け橋 ─ 「命のインフラ」としての小児・産科医療を考える

副会長
山本 泰明

少子化の進行が止まらない。産婦人科の最前線に立つ我々にとって、分娩件数の減少は単なる統計データではなく、地域医療の風景を塗り替える切実な危機として迫っています。出生数の減少は産婦人科・小児科双方の診療体制を直撃し、特に医師少数県という逆境にある新潟県、新潟市において、その影響は極めて深刻な局面に達しています。

今、私たちが直視すべきは、個々の医療機関の努力だけでは解決し得ない、地域医療の「持続可能性」という課題です。現在、多くの総合病院が赤字経営の中で、小児救急や周産期医療は「不採算」という厳しい現実に直面しています。効率性や採算性が偏重されるあまり、地域の将来を担う子供たちのための診療科が縮小の危機に晒されています。

しかし、ここで視点を変えたい。小児科や産婦人科は、単なる一診療科ではありません。その地域に家族が安心して住み続けるための、不可欠な「社会インフラ」ではないでしょうか。道路や水道、警察、消防といったインフラが収益性のみで語られないのと同様に、子供たちの命を二十四時間守り続ける体制は、都市の存立基盤そのものです。この「命のインフラ」を維持することは、病院という一組織の経営課題に留まるものではなく、新潟市、ひいては新潟医療圏全体の未来を守るための最優先の投資であると確信しています。

現状の小児科医療体制には、制度上の歪みも生じています。新潟市以外の近隣医療圏で小児二次救急体制が不十分なため、結果として現状は新潟市の二次救急へ搬送が集中しています。特に、本来の小児二次輪番病院の情報が市外に公表されていないため、非輪番日や夜間休日にも市外から応需依頼の電話が入り、現場は緊急対応の連続で疲弊しきっています。もはや、小児救急体制は新潟市単独で維持できる限界を超えています。

こうした課題に対し、私たちは行政とこれまで以上に手を取り合い、持続可能な協力体制を築いていかなければなりません。具体的には、新潟市を含めた新潟医療圏全体での「広域二次輪番制」を正式に構築することが急務と考えます。不採算、赤字の元凶というレッテルを乗り越え、周産期・小児医療を「地域の宝を守る公的な仕組み」として再定義し、市町村による安定的かつ継続的な支援を賜りたいと考えます。それは単なる財政的援助の要請ではなく、官民が一体となって「子育てしやすさNo.1の新潟」を創り上げるための、前向きなパートナーシップの提案です。

日野原重明先生は、医療は「生」を支えるサービスであり、社会全体で育むものだと説かれました。リソースが限られているからこそ、ICTを活用した産小連携の深化や、病院とクリニックの役割分担の最適化など、知恵を出し合う必要があります。医師会としても、そのための対応をする準備を進めています。

「子供は社会の宝」という言葉を、具体的で揺るぎない「体制」として形にすること。親御さんが深夜に不安を感じたとき、いつでも門戸が開いているという安心感を、広域医療圏の自治体と共に提供し続けること。それこそが、私たちが次世代に手渡すべき最高の贈り物だと思います。新潟の未来を拓く「命のインフラ」を、共創の精神で維持・発展させていくために、皆様と歩みを共にできることを心より願っています。

(令和8年4月号)

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