新潟大学大学院 医歯保健学研究科 発達神経科学分野 教授
臼井 紀好
このたび、2025年9月1日付で新潟大学大学院医歯保健学研究科発達神経科学分野教授を拝命いたしました、臼井紀好と申します。脳研究と解剖学教育において長い歴史と伝統を有する新潟大学医学部に着任できましたことを、大変光栄に存じますとともに、その責任の重さを感じております。本紙面をお借りしまして、新潟市医師会の先生方にご挨拶申し上げます。
私は2007年に日本大学を卒業後、総合研究大学院大学に進学し、愛知県にある生理学研究所において神経回路の形成とグリア細胞の発生に関する研究に従事し、2012年に博士号を取得いたしました。発生学と形態学の視点から脳の成り立ちを捉える姿勢は、この時期に培われ、その後の研究と教育の基盤となっております。
学位取得後は、米国テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンターに勤務し、社会性の神経基盤に関する研究に取り組みました。ヒトを含む霊長類の脳比較研究や、自閉スペクトラム症に関連する分子機構の解析を通して、脳の発生・発達と精神機能とのつながりについて学ぶ機会を得ました。その後、福井大学では、臨床と基礎が近い環境の中で研究を進め、さらに大阪大学では、解剖学教育に携わりながら、脳の発生・発達と行動の関係について研究を継続してまいりました。
これまでの経験を通じて、解剖学が医学教育の基盤であると強く感じております。人体の構造を正確に理解することは、診断、治療、画像読影、手技のいずれにおいても出発点となります。とりわけ神経解剖学は、神経症候の理解や病変局在の把握に直結し、臨床医学との結びつきが非常に強い分野です。一方で、学生にとっては難解で抽象的に感じられやすい領域でもあります。そのため私は、形を覚えることにとどまらず、構造と機能、さらに病態とのつながりを意識しながら学ぶことが重要であると考えております。
新潟大学に着任後は、神経解剖学および発生学の講義・実習を担当し、教室の立ち上げを進めております。現在は教育体制の整備に加え、実験室や研究環境の構築も段階的に進めているところです。学生が解剖学を単なる暗記科目としてではなく、人体を理解するための学問として、さらに臨床へとつながる思考の基盤として捉えられるような教育を実践していきたいと考えております。
また、解剖学教育においては、知識や技術だけでなく、医学を学ぶ者としての姿勢を育むことも大切であると考えております。ご献体を前にして学ぶ実習は、医学生にとって、ご献体への敬意、医療への責任、そして患者さんに向き合う態度を学ぶ貴重な機会です。その意味でも、解剖学教育は医師としての基礎を形づくる重要な学びの場であると感じております。
新潟大学は、形態学研究の豊かな伝統を有するとともに、基礎と臨床が連携しやすい環境に恵まれております。この特長を生かしながら、神経科学の基礎研究を発展させるとともに、将来の医療を支える人材育成にも力を注いでまいります。加えて、新潟という地域に根ざした大学の一員として、地域医療を支える先生方とのつながりを大切にしながら、医学教育と学術研究を通じて貢献してまいりたいと考えております。
新潟大学医学部における解剖学教育と脳研究の発展に努めるとともに、地域医療と学術の双方に貢献できるよう尽力してまいります。新潟市医師会の先生方におかれましては、今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
(令和8年5月号)