新潟大学大学院医歯保健学研究科 眼科学分野 教授
赤木 忠道
このたび、2026年1月1日付で新潟大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野の第7代教授を拝命いたしました。新潟大学眼科学教室は1910年に新潟医学専門学校の創設と同時に設置され、2026年に開設116年を迎える長い歴史を有する教室です。地域医療を支えるとともに、全国的にも高い水準の診療・研究・教育を継続して実践してきました。特に緑内障分野においては、臨床および研究の両面で高い評価を受け、その存在感を示してきた伝統があります。これまで眼科学分野を牽引してこられた諸先生方のご尽力とご功績に、心より敬意を表します。
私は高知県に生まれ、中学・高校時代を岡山県で過ごし、その後、東北大学医学部に進学しました。そこで、眼科の繊細なマイクロサージェリーと、その当時まだ有効な治療法のなかった網膜変性疾患に対する網膜再生治療の可能性に魅了され、眼科を専攻することにしました。
1998年に卒業後、京都大学眼科学教室に入局し、大学院では高橋政代先生のご指導のもと、念願であった網膜再生研究に取り組みました。網膜変性疾患に対する網膜移植治療を念頭に、移植源となる視細胞をさまざまな細胞から分化誘導する研究です。本研究はその後も発展を続け、世界初のiPS細胞を用いた細胞移植手術へとつながり、現在では、iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞や視細胞が、移植によって生着しうることが示されています。
同時期に、京都大学ウイルス研究所(現ウイルス・再生医科学研究所)の影山龍一郎先生のご指導のもと、網膜神経細胞の発生分化の制御機構に関する基礎研究にも従事しました。神経発生に関わるBasic Helix-Loop-Helix(bHLH)遺伝子4種類のさまざまな組み合わせのダブルノックアウトおよびトリプルノックアウトマウスを作製し、網膜神経細胞の分化過程において複数のbHLH遺伝子が相互に機能補完しながら細胞分化を制御していることを証明しました。マウスと培養細胞の管理のため、長期休暇を取ることもほどんどなく、研究に没頭する日々を過ごしました。大変ではありましたが、世界初の発見に携わる喜びを味わうことができた、私にとって大変貴重な時間でした。
大学院修了後は、眼科手術の技術をさらに高めたいという強い思いから、奈良県の天理よろづ相談所病院で6年間、手術に集中的に取り組みました。夜間や土日を問わず、目の前の患者さんにとって最善の治療を熟考し、万全の準備のもと、確かな技術を提供するために最大限の努力を続けました。働き方改革が進む現在では、なかなか考えにくい働き方であったかもしれませんが、その経験を通じて、白内障手術、緑内障手術、硝子体手術、斜視手術など、幅広い眼科手術を数多く経験することができました。これらの経験は、その後の私の臨床の大きな基盤となっています。
2010年に京都大学眼科学教室にスタッフとして戻り、緑内障を専門領域として臨床と研究に邁進してきました。緑内障は、眼圧を主要な危険因子として生じる慢性進行性の視神経変性疾患であり、日本の中途失明原因の第一位を占める重要な疾患です。現在のところ、眼圧下降治療が唯一確実なエビデンスのある治療方法であり、新しい術式開発や、眼圧下降治療の客観的評価法の開発など、臨床研究にも注力してきました。こうした緑内障分野における診療・研究の実績を評価いただき、2021年より新潟大学眼科の准教授としてお招きいただき、2026年1月から教授に就任しました。
今後は、時代の変化や医療を取り巻く環境の変化に柔軟に対応しながら、地域の中核病院としてあらゆる眼科疾患に対する高水準の診療を継続してまいります。また、専門領域である緑内障については、当教室の伝統をさらに発展させ、全国、そして世界に存在感を示せるよう尽力していく所存です。今後とも、何卒ご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(令和8年6月号)