笹川 基
1998年りゅーとぴあ開館以来、東京交響楽団が新潟定期演奏会を開催していますが、合唱付きオーケストラ曲を共演するための合唱団として「にいがた東響コーラス」は誕生しました。昨年、結成20周年を迎えました。私も結団以来、バス団員として参加しています。
2005年からは妻も入団し、夫婦で練習に通っています。
開館記念特別演奏会として、オルフ「カルミナ・ブラーナ」が演奏されました。1999年からは年1~2回の定期演奏会で、「レクイエム」などの合唱曲が取り上げられています。
「にいがた東響コーラス」の一番の特徴は、オーディション制を布いていることです。入団オーディションの他、出演オーディションがあり、数か月間練習しても、合格しなければ本番ステージには上がれません。また、原則的にオーディションの成績がステージ上の並びに反映されます。
演奏会では原則的に暗譜で歌います。暗譜によりタクトをしっかり見ることができ、指揮者の音楽表現が理解できます。「カルミナ・ブラーナ」では、127頁のラテン語楽譜を暗譜で歌いました。
「にいがた東響コーラス」には医師団員が多く、現在、私を含めて5人の医師(内科医、外科医、小児科医、麻酔科医、婦人科医)が参加しています。脳外科医、病理医なども在籍したことがあり、総合病院が設立できそうでした。副会長・永井明彦先生、小児科・笹川富士雄先生は結団以来のコーラス仲間です。
モーツァルト「レクイエム」など有名曲の他、新潟では普段聴けない珍しい曲も取り上げられました。フィンランド語で歌ったシベリウス「フィンランディア」は、フィンランド第二の国家です。オーケストラによる単独演奏が多いのですが、第55回定期演奏会では、中間部で合唱が入りました。歌いながら、目が潤みました。ブラームス「運命の歌」、「悲歌」には、心温まる旋律がたくさん詰まっていました。
過去2回演奏されたオルフ「カルミナ・ブラーナ」には、魔物が潜んでいました。開館記念特別演奏会の本番直前には、20年前に入れた差し歯が急に外れました。第57回定期演奏会では、楽屋から歩き出した瞬間にズボン臀部の縫い目が裂け、大穴が開きました。ステージ上でも両手で隠しながら歌いました。誰も気付かなかったようですが、ほろ苦い演奏会となりました。
「にいがた東響コーラス」は東響定期演奏会の他、多くの演奏会に出演しています。
思い出深いのは、2001年11月サントリーホールで開催された第486回サントリー定期演奏会へのエキストラ出演です。マーラー「千人の交響曲」は多くの合唱団員を要するため、新潟からも数名が参加しました。音の響きも内装も素晴らしいホールですが、楽屋だけはりゅーとぴあの方が広くて立派でした。
NHK交響楽団主席オーボエ奏者・茂木大輔さんが主宰する「もぎオケ」との共演、「コシ・ファン・トゥッテ」、「トスカ」などのオペラ出演、りゅーとぴあ専属オルガニスト山本真希さんを中心とした「メサイア」演奏会、新潟市が政令指定都市となった年の「にいがた祝祭コンサート」など、さまざまな演奏会でも歌うことができました。
りゅーとぴあでは、4年に1度大晦日にジルベスターコンサートが開催されています。2012年のコンサートには、「にいがた東響コーラス」も出演しました。「アイーダ」、「ナブッコ」、「ローエングリーン」などオペラ合唱曲のあと、カウントダウンには「タンホイザー序曲」が選ばれました。2013年元旦0時00分ぴったりに荘重な曲が終わり、マエストロ秋山和慶さんのタクトが下ろされました。爆竹が鳴り花吹雪が舞い、総立ちの観客とともにステージ上で新年を迎えました。終了後に行われた打ち上げには、聴きにきていた二人の娘たちもちゃっかりと参加しました。帰宅後、家族の“飲み”は、夜明け近くまで続きました。
2019年度東京交響楽団新潟定期演奏会の日程が発表されました。「にいがた東響コーラス」は、9月15日ライアン・ウィグルスワース指揮でベートーベン「カンタータ・静かな海と楽しい航海」、2020年3月29日鈴木優人指揮でバッハ「マタイ受難曲(メンデルスゾーン版)」を演奏します。「マタイ受難曲」は楽聖バッハが残した世界最高の音楽物語です。ステージ上で最高の瞬間が迎えられるよう、準備したいと思っています。
写真1 オルフ「カルミナ・ブラーナ」(第57回定期演奏会)①
写真2 オルフ「カルミナ・ブラーナ」(第57回定期演奏会)②
1列目中央は永井副会長、その上は筆者
(平成31年5月号)