勝井 豊
新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が激減した機会に、久しぶりに映画を観に行ったので、ご紹介したい。
『DUNE デューン 砂の惑星』
フランク・ハーバートの長編SF小説の前半部分を映画化したものである。約8000年後の宇宙が舞台で、人類は広大な宇宙帝国を築いていたが、「寿命を延ばす」、「超人的な思考能力を与える」、「超光速での移動を可能にする」魔法のような香料『メランジ』の唯一の供給源である「砂の惑星」の経営権をめぐる争いが、テーマになっている。主人公である王子が母親と行動を共にしながら、様々な試練を克服していく様子が、派手なアクションシーンが連続する中で描写されている。宇宙船や謎の先住民、巨大な砂虫が潜む広大な砂漠、壮烈な戦闘場面などが次々に登場し、2時間35分の上映時間があっという間に過ぎてしまった。
監督 ドゥニ・ヴィルヌーブ
脚本 エリック・ロス他
製作 メアリー・ペアレント他
2021年 アメリカ
『83歳のやさしいスパイ』
第93回アカデミー賞にノミネートされているドキュメンタリー映画で、チリの大学で教鞭をとっている女流監督マイテ・アルベルディの作品である。
特養に入居している母親が虐待や盗難の被害にあっていないかの調査を、実の娘が探偵事務所に依頼したという実話を取材したものである。83歳の男性が「スパイ」として雇用されて施設に入居して調査を開始するのだが、彼が目にしたのは、一人一人の多様な人生と、それを温かく見守っている職員たちの姿であった。
やさしくてハンサムで聡明な彼は、たちまち女性入所者の人気者になってしまうが、調査の結果、虐待や盗難は存在せず、むしろ面会に訪れようとしない娘の態度こそが、彼女の母親の心を傷つけていることを発見するのであった。3か月後に彼の任務は終了して退所することになり、映画も終了している。台本もなく、役者もいないにも拘らず、感動的なシーンやユーモラスなシーンが随所にあり、亡くなった人を拍手で送り出すシーンが特に印象に残った。
監督・脚本 マイテ・アルベルティ
2020年 チリ他
(令和3年11月号)