榎本 隆之
大阪大学に勤務していた時、ある機会に病院のピアノを弾いたら患者さんがすごく喜んでくれたことがきっかけとなって、院内コンサートを定期的に開き、多い時は約300名の患者さんが聴きに来てくれました。9年前新潟大学に赴任してから、内山聖院長(当時)にお願いして新外来棟建設時にグランドピアノを買っていただき、看護師さんや病院事務スタッフの協力をいただいて4月に桜コンサート、8月にサマーコンサートを開催しています。医局員や医学部生だけでなく時には患者さんも一緒に演奏してくれています。その模様はNHKの全国ニュースでも2回放送されました。新型コロナ感染症のために残念ながら昨年からは中断しています。
私は小学生の時にピアノを習っていましたが不真面目な生徒でした。いろいろな小曲を弾くのは好きでしたが、ハノンやチェルニーなど薬指と小指に極端な負荷をかける筋トレのような練習曲がいやで5年生の時には辞めました。高校生の時に友人に誘われて行った演奏会でウィルヘルム・ケンプという世界的なピアニストのベートーヴェンのピアノソナタ「月光」の演奏を聴き、第1楽章の神秘的な音、第3楽章の躍動感のあるパッセージにとても感動し、2-3日頭の中でずっとその音楽が回っているような感覚を得ました。どのような楽譜からこのような音楽ができるのかとても興味がわいたので、「月光」の楽譜を購入しました。第1楽章は意外に簡単そうに見えたので、練習を始めたのがきっかけでまた時々ピアノを弾くようになりました。3年半の米国留学時など全く弾く機会がないときもありましたが、その後細く長く弾いております。
大学に勤務していると、常時帰宅が遅いため、必然的にピアノの弾ける時間はたまにしかない休日の日中に限られるのが悩みでした。そこで、グランドピアノを購入した際に完全防音室を造り、いつでも気兼ねなく演奏できるようにしました。しかし、その後新潟大学に赴任することになり、弾く環境がなくなりました。
ある日古町筋を歩いていると、「Dr可児」というアップライトを置いている洋食店を見つけました。店のマスターに「ピアノを弾かせてくれますか」と聞いたところ快諾してくれたので、時々夕食に行ってはその度に弾かせてもらっています。そこで弾いていると他のお客さんから曲のリクエストがかかることもあります。また、他に客がいない時にピアノを弾かせてくれるジャズバーも見つけました。私は今年度で定年ですので、ピアノを弾く時間がこれまでより増えるのが楽しみです。
写真1 大学病院でのサマーコンサート演奏風景(2018年8月)
写真2 ASGO(Asian Society of Gynecologic Oncology)総懇親会での演奏風景
(2019年10月、於韓国・仁川)
(令和3年12月号)