木村 洋
私はTVを見ながら育った世代で、テレビ大好き人間です。ただ最近はコロナ禍もあるのかTV番組もバラエティーが増え、私にはあまり笑えないお笑い芸人のショーや芸人といわれる人たちの出演するクイズ番組が多い印象です。意外な人が蘊蓄を傾けたり、ひらめきをみせたり、逆にいわゆるおバカタレントと称される人たちが馬鹿さ加減をこれでもかとさらけ出すような企画がゴールデンタイムを独占している印象で、最初は面白いかなと思っていましたが、いささか食傷気味です。その中で、一線を画すような表題の番組に巡り合いました。
NHK Eテレを時々見るようになり、目に留まった番組です。そのきっかけは本屋でドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』をアレンジした『ミステリー・カット版 カラマーゾフの兄弟』を見つけたことが発端です。昔々読んだような記憶がありましたが、難解で最後まで読んだのか、今となってはその内容も全く覚えていないありさまです。そこで、ダイジェスト版でもいいので、もう一度トライしてみようかなと思っていたところ、昨年の11月にドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』が放送されており、タイミング良く見ることができました。ちなみに昨年はドストエフスキー生誕200年だそうです。
本のタイトルや作者のことは知っているけれど、内容はよくわからない……。昔読んだ記憶があるが、あらすじさえも忘れてしまった小説や一度は読みたいと思いながらも、手に取ることをためらったり、途中で挫折してしまったり、読んだ「気になっていた」数々の“古今東西の名著”や難解な1冊を、25分×4回、つまり100分で読み解くと謳っています。その作品や作者について造詣の深いプレゼンターがわかりやすく解説していますし、アニメーション、イメージ映像、ベテラン俳優の朗読などを駆使して、奥深い“名著”の世界に迫ります。案内役は、タレントの伊集院光さんと、安部みちこアナウンサーが担当し、素人的な疑問点にもゲストが答えてくれます。誰もが一度は読みたいと思いながら、なかなか手に取ることができない古今東西の「名著」を読んだ気になるもよし、もう一度トライするもよしです。いわゆるReader’ s Digestです。テキストもバックナンバーが豊富で見逃したものには好都合かもしれません。
ちなみに昨年の10月はヘミングウェイ、12月はカール・マルクスの『資本論』、今年1月は金子みすゞ詩集です。
そして2月は日蓮の手紙、3月がエドガー・アラン・ポーと続きます。
(令和4年3月号)