笹川 基
新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)は、1998年10月22日に開館した。コンサートホール、劇場、能楽堂などがあり、新潟における芸術文化活動の拠点となっている。
開館にあたり、新潟市と東京交響楽団との間で準フランチャイズ契約が結ばれた。東京交響楽団はサントリーホール、ミューザ川崎シンフォニーホール、東京オペラシティコンサートホールとともに、りゅーとぴあでも定期演奏会を開催することが決定した。
新潟の隣県には、プロオーケストラを持つ県が多い。山形県では山形交響楽団、群馬県では群馬交響楽団、富山県にはないが石川県ではオーケストラ・アンサンブル金沢が活動している。新潟にもプロオケを作ろうとする動きがあったようだが、一流プロオケを維持するのは難しい。日本を代表する東京交響楽団の演奏を年6回(昨年度からは年5回)りゅーとぴあコンサートホールで聴けるのは、至極の幸せである。
第1回定期演奏会は1999年4月11日に行われた。大友直人指揮、前半はブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調」、ヴァイオリン徳永二男、チェロ堤 剛で演奏された。後半はベートーベン交響曲第3番「英雄」、アンコールはエルガー「弦楽セレナーデ第2楽章」であった。
25年が経過し、多くの楽団員が入れ替わった。コンサートマスターは大谷康子さんから、グレブ・ニキティンさん、小林壱成さんへ引き継がれた。プログラムの楽団員名簿を見ると、現在まで活動している団員は約10名に過ぎない。超難関といわれるプロオケ入団オーディションに合格した新メンバーの加入により、演奏のクオリティが年々アップしている。特に感じるのは、ソロパートを演奏することが多い管楽器奏者のレベルアップ。トランペットやホルンは金管楽器の中でも難しいようで、綺麗な高音パートを外すことも、昔はあった。最近では、音を外すことなどない。打楽器群のリズムに合わせた木管楽器や弦楽器のアンサンブルも実に素晴らしい。フルオーケストラが奏でる立体的な響きの感動は、コンサートホールでしか味わえない。
新潟でのプログラムは、前日、サントリーホールなどで行われた演奏会と同じことが多い。プロオケは、2~3回の練習で本番を迎えるようである。新潟での演奏会前日、サントリーホールで同プログラムのコンサートを聴いたことがあるが、新潟での演奏の方が良かったと感じたことがある。最近では、新潟オリジナルのプログラムも組まれている。
新潟定期演奏会では、入場の際、オケメンバーを温かい拍手で迎える。メンバーは自席についても座らず入場の拍手に応え、最後にコンサートマスターが登場してから着席するのが、ルールとなっている。演奏終了後も、聴衆の拍手は熱い。ステージに立った楽団員の柔らかな笑顔が、東響メンバーと新潟の聴衆との絆の証であろう。
定期演奏会の日のお昼過ぎ、ホワイエでロビーコンサートが開催されている。数名のオケメンバーによる室内楽のコンサートである。ホワイエに行けば、誰でも無料で聴ける。また、子供たちのための音楽会「オーケストラはキミのともだち」が夏休みに開催されており、子供たちの音楽教育にも貢献している。東京交響楽団は、新潟に根付いたオーケストラとなっており、立派な音楽文化を築き上げている。
東京交響楽団第137回新潟定期演奏会(指揮:ジョナサン・ノット)
(りゅーとぴあ音楽企画課より提供いただく)
(令和6年11月号)