木村 洋
私たち夫婦の楽しみのひとつに温泉巡りがあります。それは日帰り温泉であったり、近くの温泉に一泊二日で出かけたり、時には有名温泉を目指して、遠出をしたりしています。
温泉入浴の作法があるとすれば、まずは掛湯を数回。急激な温度変化と血圧上昇を避けることと汗や体の汚れを軽く落とすこと。掛湯はつま先から脚、腹部胸へと順次体を慣らす。次に半身浴で2-3分、その後少し汗ばんできて、皮脂腺から出た垢を一緒に洗い流すように体を洗う、そしてゆっくり湯につかり、入浴時間はほどほどに、出たり入ったりを数回繰りかえす。保温効果とともに体についた温泉成分を流さないように、入浴後はシャワーを浴びないなどが言われています(泉質にもよりますが)。
私事ですが心臓に難のある身なので、あまり心臓に水圧の負担をかけずに入浴するように心がけています。その一つに半身浴があります。肩まで浸からなくともゆっくり入れば血行はよくなるといわれますが、温泉には肩まで浸かってゆっくり温まりたいものです。また、心臓への水圧負担を軽減しつつ肩まで浸かる方法に「寝浴」があります。しかし専用の浴槽が必要で、どこの温泉にも施設が整っているというわけにはいきません。
そんな時、和倉温泉の有名な加賀屋の別邸「松乃碧」に泊まった時に知ったのが「浮遊浴」です。和倉温泉の泉質は海の温泉といわれるようにナトリウム・カルシウム−塩化物泉(高張性弱アルカリ性高温泉)で体が軽くなります。それを応用して、浴槽の縁を枕のようにして頭をのせます。そして、膝を曲げて足の裏を浴槽の底につけると、頭と膝下(下肢)を支えとしてブリッジ(橋)のようにするとフワリと体が浮き上がります。心臓がお湯のライン付近に来るので肩まで浸かっても心臓への水圧負担が軽減されます。コツは無理に浮こうとせず、息を吐いたら沈んで、息を吸えば浮くというように呼吸に合わせて身を任せます(末尾に拙いイメージ図を記載しました)。
宇宙空間に無重力で浮いている感覚や大海原にプカリ・プカリと浮いているように感じます。また、空にぽっかり浮かんで流れる雲の感覚を味わえ、一曲好きな歌でも唸りたくなります。昔ならさしずめ浪花節でしょうか?
リラックス入浴法でα波優位になるようです。特に比重が高い「高張性」の温泉が適していると思います。楽々体を伸ばして広い温泉ならでは味わえない経験と思います。
風呂上がりに冷えたビールに地酒にさらにおいしい料理で極楽、極楽。
「深酒に風呂は明日と決めて寝る(詠み人知らず)」
和倉温泉「加賀屋」別邸「松乃碧」で覚えた、おすすめの入浴法です。能登半島地震で壊滅的な被害を受けた旅館施設並びに能登半島の復興を祈ります。
(令和7年7月号)