勝井 豊
国内映画ミニシアター部門で優秀賞を受賞したこの映画では、花火や自衛隊が登場し、小千谷市や五泉市、新発田市で撮影が行われたが、1月3日に観に行った印象を述べたい。
PKOで南スーダンに派遣された自衛隊の日報が、安全であるはずの現地で自衛隊員が危険にさらされている事実を意図的に隠蔽しようとしていた疑いがあるとして2017年に世間から糾弾されているが、それをヒントにして作られたこのフィクション映画では、PKOで南スーダンに派遣された自衛隊の分隊が、移動中に武装集団に襲撃されて1名が殉職する場面で始まっている。親友の殉職を目の前で見届けた主人公は、それが事故死として処理されたことに深い疑念をもちながら自衛隊を辞職して鉄工所で働き始めるが、過去の記憶がフラッシュバックしてトラブルを招いて解雇されてしまう。鉄工所の社長からの紹介で彼の知人の花火師のもとで修業が始まるが、打ち上げ花火の製作は高度の熟練が求められる難度の高い仕事であり、主人公が苦労しながら必死になって修業する様子が描かれている。花火の打ち上げの時の爆発音と閃光が過去の悪夢のような体験を思い出させて主人公を苦しめるが、周囲の温かい支援のおかげで何とか乗り切って花火師として成長していった。しかし、彼はPKOで共に働いていた元隊員が関わっていた非合法な武器ビジネスにも関与していたために、彼らの陰謀に巻き込まれて窮地に陥る。しかし、何とか乗り切って事なきを得て、花火師として一人前になった主人公が、殉職した親友のために鎮魂の花火を打ち上げる場面がラストシーンになっている。
映画の解説によると、火薬は戦争のときは武器として、平和なときは花火として使われるという二面性をもっているとのことである。硝煙の立ち込める戦場を体験した主人公が、その後に花火師になるとの設定は、まさにこの二面性を鋭く捉えてストーリー全体を貫いているように思える。平和な日本では花火の閃光や爆発音に恐怖を感じる人はいないが、戦火にさらされている人たちは、夜間のミサイルやロケット砲の閃光や爆発音に対して生命の危機を感じている。
日本は戦後80年の長きにわたって平和の恩恵を享受してきたが、周辺国や同盟国の有事や政策に連座させられるリスクが現実のものとなりつつあることを考えると、この映画のテーマが重い意味をもっているように思えてならない。
2025年10月31日 公開
監督 小島 央大
製作・配給(株)アニモプロデュース
(令和8年2月号)