早川 広史
診療中、病気の説明をしようと診察机の隣の棚においてある資料を取ろうとして、重ねてあった諸々のパンフレットが落ちてしまう。棚にマグネットで止めてあるカゴの中の携帯吸入器見本の数が多くて、なかなか取れない。机上のパソコン画面で手足口病の画像を見せて説明しようとデスクトップのファイルを探すけど見つからない。そんなこんなで診療がストップすることが多くなり、見かねたというよりあきれたスタッフが手渡してくれた本がこの1冊である。
日本初の「かたづけ士」が書き下ろしたかなり大仰なネーミングで、流行の「断・捨・離」の向こうを張っているかのようである。「断・捨・離」は、修行のため心を決めて取りかかるぞ・決意表明がいるぞという重い響きがある。しかし本書の内容はイラスト入りで分かりやすく、短時間で軽く読むことができる。「たった1分で人生が変わる片づけの習慣」というベストセラーの続編=実践編である。具体的に家の玄関から入って台所、リビング、仕事場と話が進んでいく。最初の項目で、例文として『片づいていない病院のお世話になりたいですか?』でまず引き込まれる。病院についての話はここだけであるが、片付けることの目的意識や動機付けから説いてゆく。
仕事場の項目では『会社の入り口はとくにキレイに』とあるが、これはクリニックも同じ、そしてトイレも同様。片付いていなければ自らが行うこと。院長がトイレ掃除をはじめたらスタッフは居たたまれまい。
『できる人はデスクトップ上のアイコンが少ない』、『受信ボックスは常に空にする』ドキッとする項目であるが、なるほどねという書き方である。
最終章は『モノを減らすと、人生が軽やかに動き出す』⇒『片づけ上手は、生き方上手』で締めくくられる。極意は『片づけはすぐやる! 少しでもやる!』後に回さないという、何でも後回しにする私にはかなり苦手な事であった。少しずつ診察机の周囲とパソコンのデスクトップの片付けからはじめよう。
『たった1分で人生が変わる片づけの習慣〈実践編〉』
著者 | 小松 易 |
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出版社 | 中経出版 |
価格 | 1,365円(税込み) |
単行本 | ソフトカバー:207ページ |
出版年月 | 2010年12月17日 |
ISBNコード | 978-4806139126 |
(平成23年10月号)