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新潟市医師会報より

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『開港場 ─新潟からの報告─ イギリス外交官が伝えたこと』 ─明治初期の医事事情を知ることも─

蒲原 宏

著者は新潟県立歴史博物館副館長。新潟日独協会理事でもある。昭和35年新潟市生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科を卒業。ドイツ国ミュンヘン日本総領事館の副領事であった。

帰国し、新潟県庁に入り、知事政策局国際課の政策企画員から現職に転出。幕末から明治初期の新潟港の外交官の動向の調査を開始した。主として横浜開港資料館が蒐集したイギリス外交文書の原典を翻訳し、それを基として新潟港、新潟県、新潟町の近代文明開化の実態と外交官の動きを詳しく論述していて面白い。

当時の若手イギリス外交官たちの目から見た「新潟港と新潟」である。有能炯眼の人々だった。

原典は(1)Embassy and Consular Archives Japan: Correspondence(F02692)―(報告1)

(2)British Paliamentary Papers, Japan. General Affairs & Embassy and Consular, Commercial Reports. Irish University Pressである。原本はロンドン市のイギリス国立公文書館に所蔵されている。横浜開港資料館でGeneral Correspondence. Japan(F. O. 46)として閲覧できる。

○

はじめに、翻訳目的と時代区分、新潟の開港に至るまでの略史が述べられ、訳文の外交文書をどう理解しながら読むかという親切な手ほどきとなっている。それに明治初期の「在新潟外国公館」の一覧表が、参考事項とともに慶応3年(1867)から明治18年(1882)まで組み込まれているので大変ありがたい。

「開港場・新潟からの報告」は次の10編である。

○

(報告1)開港場の始動

1869年7月31日 フレデリック・ラウダー(John Frederic Louder, 1843~1902, 26歳)の報告 18~20P

(報告2)開港初年の様相

1870年1月25日 ジェームズ・トゥループ(James Troop)の報告 21~45P

(報告3)新潟港の可能性と限界

1871年1月25日 ジェームズ・トゥループの報告 46~65P

以上の2つはパークス公使(Harry Smith Parks, 1828~85)への気候、風土、人口・貿易統計、国内流通統計を含めての詳細な調査報告であり、その内容には瞠目させられる。

(報告4)港の発展を阻む実情

1872年8月1日 領事代理ジェームズ・エンスリー(James Joseph Enslie, ?~1896)の報告 66~79P

(報告5)越後の様子と停滞する港(1)

1874年10月17日 ジョン・ガビンス(John Harrington Gubbins, 1852~1929, 22歳)の報告 80~92P

22歳の書記官として函館から新潟をへて東京へ帰る際に県庁で楠本県令に会い、資料、情報をもらい、大河津分水、監獄、新潟の兵営、佐渡鉱山などについて見学して作成した報告。

病院については「十分な規模の、しっかりした建物で、広々とした場所に建てられている。多くの患者を収容できるが、窓がひとつもなく換気が悪く、入院患者は8人、病室外には50~60人の患者、今年の春までフランス人医師のヴィダル(J. P. I. Vidal 1836~1896)博士がいたが、現在は西洋人医師はいない」との見学記事もある。ガビンスは後にオックスフォード大学で日本文化の特別講義を担当する研究者となる俊秀外交官であった。

(報告6)越後の様子と停滞する港(2)

1875年10月4日 ウイリアム・ウーリー(William A. Wooly)の報告 93~105P

清潔な町、港、学校それに県立医学校と病院の記事。オランダ人医師ヘーデン(Van der Heyden)博士と生徒100人。講義は1時間、入院患者35人、手術器具貧弱。人口約44,000人。輸出入物資と出入外国船統計が報告されている。

(報告7)発展したこと、変らぬこと

1877年2月15日 副領事ジェームズ・トゥループ(James Troop)の報告 106~125P

交貿、海運、産業、交通・港湾、在新潟外国人の動向と貿易港の輸出入物資の統計報告だ。

(報告8)離港に際して

1877年10月26日 トゥループの報告 126~129P

交易、商業、海運と港湾関係の事務統計報告。

(報告9)開港10年目の現状

1878年10月31日 副領代理ジェームズ・エンスリー(James Joseph Enslie,(?~1896)の報告130~161P

貿易、産業、教育、港湾関係、交通など詳細な統計をのせた報告である。病院、医学校、梅毒病院についても可成詳しく報告をしている。「新潟病院では患者が安心して治療を受けられるような十分な配慮が払われています。医療スタッフは9人、うち1人は外国人です。しかしながら病院運営の面では、こうした経験があるオランダ人医師をこれまで何人も招いているにもかかわらず、良好に運営が行われている病院施設としての一般に認められている水準にはまだまだ達してはいません。

町の人々が通常医者にかかる診察代のことを考慮して、入院や治療にかかる経費はほんの少額になっています。患者は3つに区分されます。

3級の患者はベッドが12床ほどある広々とした風通しのよい病室に入りますが、他の患者は個室です。この病院に付属した医学校が3年前に設置され、全県下から120人が学んでいます。

入学試験があり、修業年限は5年に及びます。

勤勉さと上達度を確認する試験を定期的に受け、課程修了時には最終試験が行われます。

その答案試験は東京に送られ、成績優秀者に免状が与えられます。上級の学生50数人に対しては、病院に所属するオランダ人医師が毎日講義を行なっています」。またパーム博士(T. A. Palm, 1848~1928)についても「パーム博士の活動は、新潟町のみならず近隣地方を含めて貧しい層の人々にとって大きな安らぎと支えになっています」と触れている。また県下各地の公娼制度と検黴院の運営について触れ、検黴院以外の医師での検査を受けると医師は10円の罰金を課せられると報告している。

(報告10)遠ざかる外国交易

1879年10月8日 副領事代理 ウィリアム・ウーリー(William Wooley)の報告 162~173P

貿易、産業状況の他に洪水の発生についても報告されており、佐渡山の状況、コレラの発生とパームの活動にもふれている。

著者の論考は「報告の舞台裏」として176~232Pにわたりキング殺傷事件などにも言及し、訳文もまことに流麗。開化期の新潟の貴重な基礎文献である。

医療関係の人々も目を通してほしい。登場人物の履歴と業績の紹介があればもっと面白くなると思う。

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『開港場 ─新潟からの報告─ イギリス外交官が伝えたこと』

訳編著 青柳 正俊
出版社 考古堂書店
出版年月 2011年12月
価格 A5 234頁 1,900円(税別)

(平成24年3月号)

 

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