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新潟市医師会報より

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『おどろきの中国』

浅井 忍

本書は3人の社会学者による鼎談の形をとっている。昨年ベストセラーになった『不思議なキリスト教』(講談社現代新書)は、本書の著者である橋爪大三郎と大澤真幸の対談で構成されていた。本書はそのやり方を踏襲した。対談や鼎談では、複数の視点から語られるので話が膨らむ。また往々にして大胆な切り口になるので、そこが面白い。本書は、「中国とはそもそも何か」、「近代中国と毛沢東の謎」、「日中の歴史問題をどう考えるか」、「中国のいま・日本のこれから」の4部で構成されている。中国を根本から理解させてくれそうな本である。

まず、中国をヨーロッパ社会のものさしで測ることはできないという。中国は領土が広大で多数の異民族が暮らし、とてつもなく人口が多い。同じ中国語といえども離れた場所では通じない。中国を考えるとき比べるべきモデルはEUであり、その意味で中国は国家の概念から外れているという。ではEUが統合されて間もないのに、中国が2200年も前に秦の始皇帝により統一されたのはなぜか。これが中国の謎を解く重要な鍵である。

理由のひとつは中国人のエゴセントリックな性癖にあるという。5車線道路に車線を無視して8台の車が並んで走り、ギリギリのタイミングで事故を回避するということが、現在の中国の大都市において日常的に行われているという。いわば毎日チキンレースをしているようなものだ。しかし、こうした争いが絶えない社会は疲弊する。中国人は、なによりも政治的な安定を優先するようになったという。

ふたつ目は、儒教を取り入れたことである。儒教は伝統を大切にし、年長者の教えを尊び道徳を守ろうとする考え方であり、統治する側に都合がいい。

3番目は漢字である。表意文字の漢字を理解できるのは一握りの人々で、大多数の民衆は漢字を理解できない。税を徴収される農民たちに不満が募って政府に抵抗しようと思っても、中国語の方言は生やさしいものではなく、まるでそれぞれが外国語のようなもので、漢字があるからこそ通じる。漢字を理解できない農民は団結できないから、大きな暴動にはならなかったというのだ。

さらに官僚の序列を決める科挙試験がある。中国人はランキングに異常にこだわることで、争いが起きない仕組みを作ってきた。これが中国社会の文法であって、全員の骨身にしみついているというのだ。さらに古来、中国では政治と軍事では政治が優先されてきた。官僚と軍人では官僚の方が偉いとランキングされている。中国で軍事クーデターが起こらない理由はここにあるという。

中国の大いなる謎のひとつは毛沢東である。毛沢東が推し進めた大躍進政策と文化大革命により、数千万人が亡くなったと言われている。これらの政策は、その当時から多くの人々が失敗と思っていたはずなのに、なぜ毛沢東は失脚しなかったのか。さらに毛沢東は人間性に問題があったと指摘されているにもかかわらず、いまもって優れた指導者と崇拝されているのはなぜか。毛沢東だけは失脚しないことが前提になっているとしか思われないと分析する。毛沢東をたたえることが、今の中国の政治が安定することにつながるからだということになる。

中国のいささか奇妙に見える現象は、歴史をたどれば大抵ある程度説明できる。ところが文化大革命だけは突飛であり不思議さが残るという。文化大革命の意図しなかった効果は、市場経済に適さない中国特有の伝統や習慣、行動様式を一掃したことであろう。つまり、ヨーロッパ社会のものさしでは測りえない社会主義市場経済という奇妙なシステムが、成功している所以であるという。

有史以来、日本は中国から多くのことを学び、中国をリスペクトしてきた。日本が中国より優位に立ったかに見えるのは、せいぜいここ100年くらいであるが、現在日本が中国をリスペクトしている気配はない。これは由々しいことだという。極東の国の関係を例えると、中国はクラスの担任の先生、韓国がそのクラスの優等生、日本と台湾は劣等生だったという。日本は朝鮮にも台湾にも占領政策を行ったが、朝鮮が反発し台湾が親日的なのは、クラスにおける上下関係によるという。中国も韓国も、劣等生の日本が近年力をつけてきて生意気な態度をとっていると見ている。日本側に多少の中国コンプレックスがあると日中関係は安定するという。

明治維新のあと、日本は列強の端くれに加わりたいという願望があった。日本は亜細亜主義を唱えて末期の清国を助ける目的で、列強が植民地化しようとする中国に進出した。最初は中国も頼れる助っ人ととらえたが、いつの頃からか日本が変容し侵略者になった。南京事件は何が問題なのかを日本人が正しく認識しなければ、今後も相入れない両国の関係が続くという。中国が一番許せないのは、日本人が歴史を忘れていることである。

中国国内の格差に目を向けてみる。所得分配の不公平さを測る指標としてジニ係数がある。0が平等で1に近いほど不平等の程度が大きくなる。一般に0.4を超えると暴動が起こる警戒領域だと言われている。日本は0.3、中国は0.6という報告もあるが、少なくとも0.5は超えているとみられている。すでに中国各地で暴動が起きているが、格差の割に比較的文句をいう人が少ない印象であるという。ジニ係数からするともっと大きな暴動が起きて、体制が危機的になっても不思議でないように思えるが、そうなっていなのはなぜか。ひとつは、国民が高度経済成長の恩恵に浴しているからであり、実際、所得が5年で2倍になっている。もうひとつは、一人っ子政策をやめるのではないか。あるいは、差別制度である農民戸籍がなくなるのではないかという期待があるからだという。また党や政府の幹部が汚職で摘発されると、すぐに死刑になる。これが国民に対しての申し開きのようになって、バランスをとっているように思えるという。しかし、いずれ行き詰まることは目に見えているが、そのときどんな問題が起こるか予測するのは困難だという。

21世紀は、衰退するアメリカをヨーロッパ諸国や日本がテコ入れして支え、躍進する中国と覇権を争うことになるだろう。しかし説明責任を果たそうとせず行動を予測できない中国は、覇権国家として認められることはないだろうという。そうした時に、日本の取るべき立場はインターフェイスの役目、つまり中国とアメリカの窓口になるというものである。米中が直接交渉できない、その間に入って活路を見出せという。所詮、日本は米中関係の付属物に過ぎないことを認識すべであるという。日本の選択肢が、うまく立ち回ってせこく生きるしかないというのは情けない。しかし、歴史も踏まえた冷静な目で見れば、これが日本のおかれた立場なのだろうと思う。

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『おどろきの中国』

著者 橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司
出版社 講談社現代新書
発行年月 2013年2月
定価 900円(税別)

(平成25年6月号)

  • < 『街道をゆく(9)潟のみち』
  • 『ドイツ学生歌の世界 ―その言語文化史的断面─』 >
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