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新潟市医師会報より

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『ドイツ学生歌の世界 ―その言語文化史的断面─』

鷲山 和雄

偶然本書に出会った時に、長年にわたり気になっていた疑問が一気に氷解したような感動を覚えた。

振り返ると、私は大学入学直後の医学部学友会(医学部公認学生サークルの団体)の勧誘ガイダンスで、男声合唱の生の歌声に初めて出会い、講義室いっぱいに広がる勇壮な歌声と旋律に、あっという間に引き込まれた。そして直ちに合唱部への入部を決めた。その時のFrei Kunst(自由の芸術)とStändchen(小夜曲)が、戦前からの、大学グリークラブの十八番のドイツ学生歌であった。

当時の医学生でFrei Kunstを知らぬ者はいなかった。掛け持ちしたラグビー部の合宿でも、音楽の素養と無縁の先輩から『der Samenを歌え』と要求されることさえあった。因に、Frei Kunstの歌詞に出てくるder Samenは (精霊の)種子という、文学的な高尚な言い回しである。誤解なきように。ドイツ学生歌には、Frei Kunst以外にも、かの有名なゲーテの詩によるErgo Bimamus(だから飲もう)、ユニバーシアード大会の優勝歌にもなっているGaudeamus(されば楽しもう)、あるいはStudentleben(学生生活)など、血気盛んな学生の士気を大いに鼓舞する歌が数多く含まれる。ブラームスが大学祝典序曲で引用したBeim Fuchsenritt Zu Singen(狐狩りの歌)といっても何の学生歌といわれるかもしれないが、長年にわたりラジオで流れた旺文社の大学受験講座のテーマ曲と言えば、思い出されぬ方は居られないであろう。

しかし、私はドイツ学生歌の雰囲気に浸りはするものの、学生歌に関する知識がほとんどないままに卒業してしまった。大学生活における伝統と言うものをさほど感じないままに卒業した。ところが、30年以上を経て本書に初めて接し、学生時代にドイツ学生歌を唱って良かったと改めて感じた。

本書では、学生歌を論ずる前に、ドイツの大学生によって組織される「学士会」の解説にかなりのページが費やされている。学士会の構成、礼装作法、酒宴作法である。学士会専門用語の解説を通じて、学士会の正会員になるための数々の作法についても論じられている。決闘の作法もイラスト入りで記されている。

学生歌集は学士会主催の酒宴の必需品であり、学士会員にとり必要不可欠なアクセサリーである。冗談半分にBierbibel(ビール飲みの聖書)、Saufbibel(飲み助の聖書)との俗称があり、中世以来発展してきた学生歌の変遷が詳細に紹介されている。今でこそ酒宴歌集といえばKommersbuchコメアスブーフと呼ばれるが、18世紀には、学生が歌う歌ではなく、富裕市民階級が歌うための歌集であった。そして、1781年に初めて、学生のための本格的な学生歌集が出版された。次いで、1858年に、記念すべき『Shauenburg版酒宴歌集』が発刊された。この初版本には94の愛国歌、118の学生歌、102の民謡、その他73、合計387の詩歌が収載されていた。その後毎年のように版を重ねる毎に選曲の取捨選択が行われ、1987年の第160版(489の歌を収載)が現在も入手可能な最新版であるとしている。ちなみに、私が学生時代に購入した『Allgemeine Deutche Kommersbuch』は第157版(1970年)であり、512の歌が収載されていた。

本書では、次いで、15の学生歌が取り上げられ、楽譜と対訳付きで、曲にまつわる様々なエピソードが紹介されている。学生歌に対する作詞者・作曲者の想いのみならず、当時のドイツの学生生活が活き活きと描写されており、学生賛歌、青春賛歌の書と言えなくもない。

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巻末には、詳細な参考文献とともに、入手可能なドイツ学生歌CD版情報も記載されており、大いに参考になる。冒頭に紹介するエーリヒ・クンツ「ドイツ学生歌大全集」(全95曲、CD4枚組)のキングレコード版は現在国内で絶版とあるが、私が持っているコロンビアエンターテインメント版は平成7年に発売となっており、おそらく、発売会社を変えつつ、絶版と再販を繰り返しているのであろう。このCDの購入を希望される方は、しばらく待たれるとよい。そのうちに再発売が期待できよう。ちなみに、私が学生時代に購入したLP(1970年キングレコード発売)の3枚組ではこのうちの66曲しか収録されていなかった。本書を開きつつ、ドイツ学生歌をまとまって早く聴いてみたいと思われる読者には、Erich Kunz:German University Songs(Vanguard Classics、CD2枚組)がお薦めである。輸入版なので歌詞と日本語対訳が付録していないが、日本アマゾンあるいは米アマゾンを通じて、1,000円前後の超格安価格で購入できる。これには前記のCD4枚組のうちの42曲が収められている。

綿々と歌い継がれたドイツ学生歌の歴史には、大学の伝統継承の在り方に通ずるものがある。酒宴作法は人間涵養の場でもあり、CDの男声合唱を聴きつつ本書を読むと、それがひしひしと伝わってくる。本書は、私にとり一生の宝物のような存在である。

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『ドイツ学生歌の世界 ―その言語文化史的断面─』

著者 ライムント・ラング、長友雅美
出版社 シンフォニア
発行年月 1999年10月
定価 3,500円(税別)

(平成25年7月号)

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