大滝 一
平成24年の夏ころだったでしょうか、この『ソロモンの偽証』第I部「事件」の1巻と2巻が発刊され、行く先々の書店で大々的宣伝のもとに単行本が平積みされていました。詳しいことは忘れましたが”今世紀最高の長編ミステリー”というような謳い文句だったように記憶しています。その後、第II部の「決意」、さらには第III部の「法廷」のそれぞれ1巻、2巻が相次いで刊行されました。ずらりと並んだ6巻を見ると、少し汚いですが涎が垂れそうなくらいのものすごい読書欲に駆られました。しかし、忙しいので6巻ものの長編を読むのはきついと思ったことと、そう遠くないうちに持ち運びしやすい文庫本が出るだろうと思い、その時はぐっとこらえて購入しませんでした。しかし、その後も書店に足を運ぶ度に、他の本を見ていても『ソロモンの偽証』が気になって仕方がありませんでした。
その代わりといっては何ですが、その前後に発刊された横山秀夫の『64』、相場英雄の『震える牛』、朝井かまての『恋歌』などを結構楽しく読ませていただきました。その後に本屋大賞受賞の『村上海賊の娘』をワクワクしながら読み始めました。後半は盛り上がったものの、残念ながら自分が期待していたほどではありませんでした。それもあり何としても面白い長編小説をと渇望していたところに、昨年夏に『ソロモンの偽証』の文庫本が待ってましたとばかりに出版されたのです。
医院の移転などがあり、なかなか時間が取れませんでしたが、11月になり少し時間ができましたので、まず第I部の1巻を購入し読み始めました。1巻約500ページ、6巻で3,000ページですので年始年末も使い読破するつもりでした。ということで『ソロモンの偽証』を読み始めた次第です。
その内容は、とある中学校で起きた事件? 事故? で一人の生徒の死体が学校の通用門近くの雪の中から発見されます。学校、警察、マスコミと様々な組織と多くの人間が絡み対処に追われる中、更にもう一人の女子生徒が交通事故で亡くなってしまいます。学校の思惑もあり事件、事故の解決があいまいになりそうなとき、一人の女子生徒が真相を解明しようと立ち上がり、大人を巻き込みながら、生徒主体の校内裁判を起こすことになります。
さて事件、事故の真相は、犯人は…あっと言う間に宮部みゆきのミステリーワールドに引きずり込まれてしまいました。結局11月8日に読み始め、12月4日には6巻全部を読み終えてしまいました。もし晩酌もせず、飲み会にも行かなければ2週間もあれば読み終えた気がします。でも、晩酌もせずというのは自分にはとても無理な話です。
この本は平成27年に映画化され、2部作として公開されます。主人公は新人女優が演じますが、主人公の名前をそのまま芸名にしたとのことです。藤野涼子です。本書の中でもなかなかにかっこいいです。
宮部みゆきの著書は、今まで『火車』と『レベル7』に『かまいたち』しか読んだことがありません。『かまいたち』に関しては全く内容が思い出せませんが、他の2冊はかなり面白く読ませてもらいました。
宮部ミステリーワールドの中の最高傑作とも思われる『ソロモンの偽証』、引き込まれること必至です。長編です。さあ皆さん覚悟してかかりましょう!
『ソロモンの偽証』(一)~(六)
著者 | 宮部みゆき |
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出版社 | 新潮文庫 |
定価 | (一)~(四)750円、(五)790円、(六)840円 全巻税別 |
(平成27年1月号)