勝井 豊
裏表紙に「逆さバイバイ君」の載った本書の著者は、柏崎市出身で小児科、小児神経科、児童精神科の診療を担当している発達障がい療育医である。著書も多数あるが、入門書として最も親しみやすいと思われたのが、キーワードの解説を中心とした本書である。以下掲載されたキーワードを引用しながら、その内容を紹介させていただきたい。
発達障がいとは、自閉症スペクトラム、注意欠陥/多動性障がい(AD/HD)、学習障がい(LD)、発達性協調障がい(不器用)などを含む広範な領域を持つ障がいである。前頭葉の働きによる「心の理論」つまり「人の心を読む」ことが苦手な人々のことであり、健常者との線引きが困難であるために、多数派(定型発達者)に対比して、少数派(非定型発達者)とも表現されているとのことである。
早期発見と早期治療つまり「早期の気づきと早期からの支援」により「環境調整」がなされることにより、不必要な情報を削減して本人の負担を減らし、視覚的支援を使いながら分かりやすい情報を提示するなど、学習環境を整備・保障することが可能になると説いている。
「他者の目を持つ」ことが苦手、コミュニケーションの困難、本音と建前の使い分けができない、場の雰囲気・空気を読むのが苦手、悪意のない「直球表現」、変化への耐性のなさ、自己開示の困難など、社会生活への適応の障がいをもつことが多いので、サポーター(支援者)が、教師役や、コミュニケーションのための通訳を果たすことが必要だと述べている。
読者の理解を容易にするための工夫がなされており、図表も多く掲載されている。巻末には50音表別の検索用キーワードがあり、209語のキーワードが表示されているので百科事典的な使い方も可能である。専門的な知識を持っていなくても使いこなせるので、極めて便利な解説書である。またこの障がいをもった人々への理解と支援を強調していることに敬意を表したい。会員の皆様にぜひ御一読をお薦めする次第である。
『知っておきたい発達障がいキーワード
~自閉症スペクトラム・AD/HD そして支援のための用語集~』
著者 | 東條惠 |
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発行所 | (株)考古堂書店 |
価格 | 本体2200円+税 |
(平成27年4月号)