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『ミスをしない人間はいない:ヒューマンエラーの研究』(文庫版:『失敗の心理学 :ミスをしない人間はいない』)『失敗のメカニズム―忘れ物から巨大事故まで』

木村 洋

医療事故関連のニュースが絶えません。病院責任者がマスコミに向かって、頭を下げ「あってはならないミスを犯し、誠に申し訳ありませんでした。二度とこのようなことが起こらないように努めます」と決まり文句のように謝罪します。一般の人の医療不信を増幅させる懸念を抱きます。でも、そのシーンをみて私は言葉が違っているのではないか?と異なった印象をいつも持ちます。「あってはならない」ではなく「取り返しのつかない」ではないのかと。そして、二度と起こさないようにではなく、このようなことが起こらないようにリスク管理を見直しますではないのかと。

著者は大学で心理学を教える現職教授です。大学を卒業後国鉄に就職し、鉄道労働科学研究所、JR鉄道総合技術研究所で鉄道の安全に関わる心理学、人間工学の研究をしていました。その間、カナダのトロント大学に留学やJR東日本の安全研究所に出向しています。その後いくつかの大学をへて、2006年4月から立教大学現代心理学部で教鞭をとっています。専門分野は産業心理学、交通心理学、人間工学です(著者ホームページより抜粋)。

著者との出会いは15年以上前に遡ります。列車の車内誌(あるいは飛行機の機内誌だったかもしれません)にあったインタビュー記事を見たことがきっかけです。ユニークな考え方だなと感じ、それからすぐに表題の2冊を購入し何度も読み返しては現在も自分を振り返っています。

当時私が勤務していた前任地の病院(他県)で立て続けに2件の死亡に繋がる医療ミスがありました。そのあとの処理や対応に管理者が苦労している姿を目の当たりにしました。その後医療安全にかかわる立場となり、著者のいう考え方をみんなで共有できたらいいなと思い、不躾にも突然メールし、講演会に講師として招聘しました。話が分かりやすく、軽妙で、また人間心理をついた参考となる内容でした。多くの職員が参加し、非常に好評でもありました。

2冊とも基本的には同じことを述べています。日常の失敗、例えば忘れ物、勘違い、うっかり鍵のかけ忘れなどや、交通事故、航空機事故も原発事故も、そして医療事故もその要因・発生メカニズムは人間によるミスであり、共通する問題であると説いています。つまり、ヒューマンエラーは動作の実行段階で犯す「スリップ」と認知や判断の段階で犯す「ミステーク」に分けられ、日常行動でのミスについて心理学的観点から解明しています。

例えば、Aというボタンを押すべきところ、隣のBというボタンを押してしまったとします。表面上このエラーは「対象の取り違え」と分類されるかもしれません。しかし、ある場合にはBとAを見間違えたために取り違えた「入力エラー」かもしれませんし、Bを押すべきだと誤判断してBを押した「媒介エラー」かもしれません。また、ある場合Aを押そうとして手を伸ばしたのにBに触ってしまった「出力エラー」の可能性もあります。結果的にミスという形になっても原因と、その対策は異なります。それぞれにエラーを起こしにくくする対策についても書かれています。人間の入力過程の不思議についても心理学的な興味ある実例を挙げて説明されています。

『ミスをしない人間はいない』では、「うっかりミスはなぜ起きる」「錯覚と勘違い」「意図的に起こす、やめられない、止まらない違反」「しょう油差しの色から冷蔵庫」「右よし、左よし」「ミスとの付き合い方」というユニークな表題の6章からなっています。それぞれにミスがなぜ起きるかの仕組みの解説とその防止策について、具体例が様々な実験と分析データからやさしく示されています。

例として、マニュアル改善の落とし穴、ダブルチェックの盲点、集団意思決定のリスキーシフト、組織エラーのメカニズム、先見性・予見性(先読み)に優れた人間だから起こすミス等々。

10月には事故調査制度が実施されます。事故が起きると糾弾やバッシングの嵐となりますが、どうか犯人探しにならないよう望みます。著者も「ミスは起きるものだ」を前提に、「ミスが起きても事故につながらない対策を講じることと、ミスを繰り返さないためには、ミスを他人や外部要因のせいにせず、他人のうっかりミスには寛容に、起きた事故の事実関係を徹底的に解明し再発防止策を講じること。つまり、同じようなミスはまた起きる可能性があることを念頭に、ミスの確率をできるだけ減らすことを考えるとともに、ミスが起きても事故につながらない方策を講じること(フールプルーフ、フェールセーフ)が大事だ」と説いています。

本書を読んでミスも少なくなるかなと、期待して何度も読み返していますが、今日も調剤薬局から疑義の電話が鳴っています。今まで大きな事故がないのは幸運というべきでしょうか?

本当に医療安全は難しいものです。

『ミスをしない人間はいない:ヒューマンエラーの研究』(ハードカバー版)

出版社 飛鳥新社
著者 芳賀 繁
定価 1,500円+税

『失敗の心理学:ミスをしない人間はいない』(文庫版)

出版社 日経ビジネス人文庫
著者 芳賀 繁
定価 667円+税

『失敗のメカニズム―忘れ物から巨大事故まで』(文庫版)

出版社 角川ソフィア文庫
著者 芳賀 繁
定価 629円+税

(平成27年10月号)

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