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新潟市医師会報より

新潟市医師会

『命の響』

笹川 基

「左手のピアニスト」舘野 泉さんが、脳溢血による右半身不随からの奇跡の復活につき語った自伝『命の響』を紹介する。

舘野 泉さんはフィンランドを中心に活躍する世界的ピアニストである。演奏会数は3500回を超え、世界中の聴衆から厚い支持を得ている。クラシック演奏家として初めてのファンクラブができ、北海道から九州、さらにはドイツのデュッセルドルフにまで多くのファンクラブ事務局がある。

2002年1月フィンランド第二の都市タンペレでの演奏会、最終曲グリークの「トロルドハウゲンの婚礼の日」が華やかなエンディングを迎えたところで、脳溢血のため倒れた。救急搬送されたが、手術困難な脳出血で、自然治癒を待つことになった。

懸命なリハビリを終え帰宅したのちも、ピアニストの命である右手には意思が伝わらず、満足な演奏ができない日々が続いた。

転機が訪れたのは、1年3か月経過した2003年4月のこと。息子であるヴァイオリニスト・ヤンネさんが帰り際に置いて行った一枚の楽譜が目に留まる。フランク・ブリッジ作曲「左手のための三つのインプロヴィゼーション」。弾き始めると、閉じ込められていた氷河が溶け始める。左手だけでも十分な表現ができることに気づく。

長年弾き込んできた膨大なレパートリーが一瞬にして消えてしまった喪失感は言いようもなく大きい。しかし、それを上回る、また音楽できる喜びが湧いてくる。

左手1本で芸術作品を作り上げる工夫が、第一章で記されている。88鍵のピアノに向かい、低音部のハーモニー(和声)を左手で、メロディと高音部のハーモニーを右手で弾くのが基本である。左手1本の場合、親指と人差し指にメロディ、残りの3本にハーモニーを担当させる。音楽表現の幅が狭くならぬよう、オクターブ以上の広い音域を素早く移動させる跳躍や、アルペジオ(分散和音)などの手法を多く取り入れる。また、両手に比べ不足気味の音量を補うため、ペダリングも重要な意味を持つ。

左手のピアニストのための曲は数百曲あったが、その多くが失われ、現存する楽譜は数十曲に過ぎない。有名なのは、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」くらいである。舘野 泉さんが左手のピアニストとしてデビューして以来、間宮芳生、フィンランドのノルドグレンなど国内外の有名作曲家が新譜を舘野 泉さんに捧げており、「左手の文庫」が充実してきている。

私が最初に衝撃を受けたのは、数年前に新潟市で催された「舘野ファミリー&フレンズ・コンサート」冒頭で演奏されたバッハ作曲(ブラームス編曲)「左手のためのシャコンヌ」である。無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番終曲が原曲だが、ヴァイオリン独奏に負けぬバッハの世界がホール全体に響き渡った。命の響を感じた。「左手のためのシャコンヌ」は多くのコンサートで、最初に弾かれる。

舘野 泉さんは、皇室とも親交が深い。特にご自身でピアノを弾かれる皇后陛下美智子さまは、舘野 泉さんが奏でるシベリウスがお気に入りのようで、コンサートにもしばしば出向かれる。フィンランド大使館で開催された「音楽を楽しむ会」では、この日のために編曲された吉松 隆作曲の「子守歌」を美智子さまとともに、三つの手で演奏している。

舘野一家は音楽家揃いで、亡くなられた二人の妹さんはヴァイオリニストとピアニスト、弟である英司さんはチェリストである。英司先生にチェロを教わっていることもあり、「舘野ファミリー&フレンズ・コンサート」の打ち上げに参加させてもらった。お二人とも大の酒好きである。泉さんは酒を控えるように言われると、「好きなことをやめてしまうほどヤワじゃない」と反論されるそうだ。泉さんのファンとしては、酒量を減らし健康管理に気を付けていただきたいところだが…。

「舘野ファミリー&フレンズ・コンサート」は舘野兄弟を中心に、息子・ヤンネさん(山形交響楽団第二ヴァイオリン主席奏者)、新日本フィルハーモニー交響楽団の吉鶴洋一さんなどが出演し、東北・北陸を中心に開催されている。来年1月31日には、新潟市江南区文化会館で演奏会が予定されている。舘野 泉さんに献呈されたエスカンデ作曲「アンティポダス」などが演奏される予定である。

『命の響』

出版社 集英社
著者 舘野 泉
価格 1,500円+税

(平成27年12月号)

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