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新潟市医師会報より

新潟市医師会

『〆切本』

高橋 淑子

「5月号の締め切りは4月14日です」…よりによってこんな時期に『マイライブラリィ』の当番があたってしまった。実は、3月号の当番記事を後輩に依頼していたが、ドタキャンされて急いで尻ぬぐいをしたばかりだ。

5月号の記事も大先輩にお願いしてみたが、今回は見送りとなり、毎日頭をかかえる日々。花粉症の時期は繁忙期でもあるので、読書をする気になれず、八方塞がりの状態である。

でも、この本を読んで、〆切に追われる仕事でなくて本当によかったとつくづく思った。電子カルテ1面からはみ出す患者数であろうが、あと数時間後には仕事を終えているという予想がつくし、カルテがドミノ倒しで私を追っかけてきても、それは春眠の夢なのだ。

これは、91名の小説家、劇作家、詩人、評論家、翻訳家、学者、コラムニスト、コメディアン、および3名の漫画家の原稿〆切にまつわる文章や漫画を集めた本である。

第1章では、「骨を刻むやうな苦しみ」(菊池寛)に代表される〆切に対する著書たちの悲鳴が書かれている。夏目漱石から高浜虚子への書簡、島崎藤村や志賀直哉のいいわけや吉川英治にいたっては、痛々しいほどの書けない理由が綴られている。また、〆切が職業病だといいたいがばかりに、創作病名や数式を使って語る作家たちもいて、井上やすしが数式を使って真面目に語っている(逃れようとしているとも解釈できる)のは、この人のお茶目な一面であろう。

第2章は、編集者との絶妙な駆け引きの内容が中心である。川端康成は、編集者に恩義を追い迫られないと書けないと述べている。手塚治虫は、編集者たちの間で「おそ虫」「うそ虫」と言われた。刑事に成りすまして、旅館にカンヅメになっている著者を確保した編集者もいた。〆切優等生の村上春樹の文章には、クスクス笑いながらも深い優しさを感じた。

第3章は、〆切はものともしない作家の登場で、その代表は吉村昭氏だ。その仲間うちに「作家の敵」と言わしめた。

第4章は〆切が及ぼす効能・効果の記述が多く、最後の章は、「明日があるのは若者だけだ」(黒岩重吾)のように「人生とは、〆切である」というタイトルがついている。

あとがきはなく、最後は、おそらく遅筆代表という意味で谷崎潤一郎全集第23巻に掲載されている『文章読本』の発売遅延についてのお詫びのことばで終わっている。

読み終わって感じたことの一つは、芥川賞・直木賞をとった輝かしい作家たちも最近は記憶から消えることが早く、この〆切に対する免疫力のなさが一因なのではないかと思うのである。賞をとった後を想像して創作していかなければ、ただの物書きに終わってしまう可能性があるのは、なにも小説家だけの世界だけではない。結局、人生は〆切の連鎖なのかと思いを巡らす。

5月号に間に合わず、その埋め合わせをしていただいたボスに深謝いたします。しばらくマイライブラリィの担当があたっていませんので、1か月遅れで掲載していただきました。これ、作為的ではないです。

 

『〆切本』

著者 夏目漱石、他93名
編集 左右社編集部
出版 左右社
発行日 2016年9月20日
定価 本体2,300円+税

(平成29年6月号)

  • < 『「がん消滅の罠」完全寛解の謎』
  • 『最後の決断 戊辰戦争 越後四藩の苦悩』 >
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