大滝 一
皆さんに是非お勧めしたい写真集があります。一般の方にももちろんお勧めですが、新潟市医師会員の皆様には特にお勧めしたい一冊です。写真集のタイトルは『風を聴きながら』。
なんと素敵なタイトルでしょう!耳鼻咽喉科医の私にとっては「聞」ではなく「聴」という一文字が、心の琴線にさらりとかつしっかりと触れました。
写真を見ていただければ分かりますが、著者は、人の何気ない日常生活の中の穏やかで楽しい暖風、祭りや花火の賑やかさの中の激しい熱風、自然の中にあるしんとしたたおやかで静寂な清風、白鳥の飛翔へ向けての生命力のこもったたくましい疾風など…。そういった人間、動物、自然の中の様々な風を切り取った集大成がこの写真集ではないかと思います。
風の音に耳を澄ましシャッターを切り、渾身のこの一冊を送り出したのは、皆さんよくご存知、我らが新潟市医師会会員の穂苅環先生です。
穂苅先生はFacebookにも多くの写真をアップされており、その腕前は知る人ぞ知るところですが、各種コンテストに多数入選しているという事実からも折り紙つきです。
話は35年ほど前に遡りますが、私が穂苅先生を知ったのは、医師になって1年目の昭和59年秋の麻酔研修のときです。どうしたらよいか困っていると、穂苅先生がすっとそばに来て麻酔手技などをさっと適切に指導してくれました。「からっ」として「はきはき」「てきぱき」といった印象でした。それは今も変わりません。近年では先生が勤務する病院に往診に伺ったり、医師会の会報編集委員会でご一緒させていただきました。この6月をもって先生は委員を退任されましたが、4年間ご苦労様でした。感謝いたします。
さて、写真集のプロローグを読んでみると、先生は子育て一段落後、ジム通いやマラソンにも力を入れたとのことで、その活力の高さには感服します。そして第二の人生のお供と考えたのが写真とのことです。今後の人生に向けて、何かを追求する姿勢そのものがまず素晴らしいと思います。
先生は、写真において「何かに焦点をあて自分のテーマを見つけていきたい」と述べておられますが、写真素人の私の勝手な意見としては、テーマを特に絞らず、先生が何か風を感じたその時々に自由にシャッターを切る、これが先生にはお似合いではないかとも思います。
この写真集はコンクールに「入選・入賞・展示発表作品」と、コンテストに未出な作品や入賞を逃した中で先生が大好きな作品の「お気に入り写真」の2部構成となっています。
その中から、特に私なりに強い風を感じた数点を挙げさせていただきます。まず、ほんの少し前までお嬢さんであった3人の笑顔がはじける『かしまし娘』(42ページ 写真1)には、朗らかさと恥じらいを感じます。車椅子に乗った老女の『寂寥』(86ページ 写真2)には、しんとした中にも生きることへの執念のようなものが見えます。そして、お祭りでは126ページの『一糸乱れず』と127ページの『決めポーズ』も素晴らしいですが、『出番待ち』(123ページ 写真3)は出番を控えた子ども達の不安や期待などが混じった心模様が感じ取れます。県展入賞作品の『文弥人形』(50ページ 写真4)にはドキッとさせられました。他にも花火や紅葉、雪原、藤棚など素敵な写真が満載です。一枚一枚に、そこに吹いたであろういろいろな趣の風を感じることができます。
巻末に赤いちゃんちゃんこを着た先生のかわいらしい写真がありますが、これからまだまだ長い人生、診療は勿論、マラソンそして写真も大いに楽しんでいただき、豊かなる人生を謳歌していただきたいと思います。
末筆となりますが、このたびは素晴らしい写真集を本当にありがとうございました。先生の耳で聴く新たな風を写真に込めて、さらなる続編を我々にお届けくださる日を一読者として熱望しております。勿論、会報へのご投稿もお待ちしております。
〈追加〉
写真集は先月(平成30年7月)末に発売されたばかりで、Amazonでも購入可能とのことです。これだけの写真集が1,500円というのはどうみても安すぎると思うのは私だけでしょうか。
『風を聴きながら』穂苅 環 写真集
著者 | 穂苅 環 |
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発行所 | 新潟日報社 |
定価 | 本体1,500円+税 |
発行日 | 平成30年(2018年)7月30日 |