細野 浩之
白い紙の上に黒字でタイトルと著者名が書いてあるだけのシンプルな表装なのに、何故か派手な黄色の帯にアニメキャラクターが描かれ、水色でVR is future!と書かれている。自分のライブラリーにまさかこの気持ち悪いキャラクターの帯がついた本が入るとは思いませんでした。アニメキャラが大嫌いな私にとって、絶対に手に取ることのなかった本でした。
皆さんはVR(バーチャルリアリティー)を体験されましたか?私が初めてVRを体験したのはソニーのプレイステーションVRのゲームでした。VRを体験したときの感想は、なんじゃこの邪魔臭いゴーグルのお化けは(HMDヘッドマウントディスプレイのこと)、こりゃオタクがゲームやアニメキャラをリアルに感じるために作ったディスプレイだな(VR≒ゲーム用のディスプレイのひとつとしか考えませんでした)。挙句の果てに酔ってしまい(映像酔い)、まあこれは自分の選択肢にはないなと思ったのでした。そんな私に息子が「VRはそんなものじゃないよ」と渡してくれたのがこの本でした。
VR≒ゲーム用のディスプレイくらいの認識しかなかった私に、VRという技術そのものが空気のような存在になって未来の人々の生活、娯楽、ビジネスその他すべてを変えようとしている。VRに「ミライ」を賭けている人々の考えに「未来予想図」のような面白さを感じて、一気に読んでしまいました。
今のVRは「こんなすごいことができるよ」「こんなすごいゲームができるよ」と言っているだけで、それが終わったらゴーグル(HMD)を外してしまう。「体験」が終わるとやめてしまう。毎日使うようするにはVRのままでいろいろなことができるように便利にしなければいけない。今普通にパソコンやスマホでやっていることをVRの中でも同じようにできる環境が必要でそれができて初めて今までのパソコンやスマホと同じように広めることができるとのこと。
机の上に「水平」に紙を置いて仕事をしていた時代が、「ペーパーパラダイム」。パソコンによって机の上の紙は、机の上(デスクトップ)の「垂直」なディスプレイに移行し、現在はスマホで「手元」の画面に変化し便利になったが、「四角い画面(紙)の枠」という概念は変わっていない。この「枠」に制限があるので、今までは作業に必要な情報を無理して折りたたんで押し込めていた。机の上を整理して作業スペースを空けたり、パソコンやスマホでアプリを切り替えたり、ウィンドウを並べ替えたりしていた。ところがこれがVRになると物理的な「枠」という概念がなくなる「空間パラダイム」が実現するという指摘。VRなら必要な情報を自由にどこにおいてもよく、重力などの物理的な制約とは無関係に空間に情報をいっぱい出して、なおかつ情報のある場所に自分で視線を動かして見ることができる。直感的に作業ができるようになる。VRの中で仕事をすればオフィスが要らなくなり、「机の上」の仕事が空間になり「ワークスペース」働く空間となる。などなど…。VRにより創造される「みらい」が語られています。
今のパソコンやスマホが私たちの世界を変えていったようにVRが2020年からの四半世紀を変えていくのでしょうか?VR≒ゲーム用のディスプレイの認識はなくなりました。VRに何かワクワクしてしまい、これからの進歩が楽しみになってきました。
『ミライのつくり方 2020-2045 僕がVRに賭けるわけ』
著者 | GOROman、西田宗千佳 |
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出版 | 星海社 |
定価 | 本体960円+税 |