勝井 豊
本書は世界の医学界で見向きもされなかった陥凹型・平坦型大腸がんの発見と、拡大・超拡大内視鏡によるAI診断、画期的な軸保持挿入法の開発に取り組んできた著者の「哲学」「発想法」などを、さまざまな角度から綴ったものである。
序章では「あなたはなぜ、そこにいるのか?」ということをテーマに、「真実とは何か」「自分は何者?」という自問を忘れてはならないことや、行動せずに後悔するより、まず行動することだと述べている。第一章では失敗するリスクを恐れずに、課題に挑戦する勇気を持つことが、プロフェッショナルへの道を踏み出すことになると主張している。第二章では錆びつく人生よりも、擦り切れる人生のほうがいいとの考えのもとで、目的に向かって継続的に努力を積み重ねることが大切だと説いている。第三章では想像力による「仮説」がなければ研究は始まらないし、医療とは技術であり、サイエンスであり、アートであると述べている。第四章では、今日は残りの人生の最初の日であり、ポジティブ・マインドを忘れないで、社会が変わることを待つのではなく、自分からポジティブに動くべきだとしている。
著者は秋田県で生まれ、新潟大学医学部を卒業して同大外科に勤務後に、秋田赤十字病院に赴任し、現在は昭和大学医学部特任教授、昭和大学横浜市北部病院消化器センター長を務めている。30万件以上の内視鏡検査・治療を行い、1,000人以上の医師を指導したとのことであるが、はみ出し者として扱われながらも、逆境に耐えて走り続けてきた彼を支えてきた信念の数々が47の言葉にまとめられている。
昨年10月に東京で「出版記念─感謝のつどい」が開かれて、彼を支えてきた友人や知人などの関係者が招かれていたが、そのときの案内状によると、著者の長年にわたる読書生活のなかで感銘を受けた箴言・名言とともに、折々の感想を「生きる哲学」として述べたのが本書だとのことである。大きな目標を達成するには、体力、気力、友人の他に、哲学も必要であることを本書は教えてくれているように思われる。会員の皆様にも是非御一読することをお勧めする次第である。
『逆境の中で咲く花は美しい』
がん患者の救世主の生きる哲学
著者 | 工藤進英 |
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発行所 | 株式会社幻冬舎 |
発売日 | 2017年9月21日 |
定価 | 本体1,200円+税 |